11月は10日以後から「神田古本まつり」で買い込んだものの消化に取りかかりはじめた。
ソノラマ文庫の光瀬龍、石津嵐、角川文庫のシューヴァル&ヴァールーなどは小学生の頃に、福武文庫のヘミングウェイ、エイメなどは高校生の頃に本屋で目にしていたものである。
シューヴァル&ヴァールーのマルティン・ベック・シリーズは現行版もあるようだが、装幀が変わると買う気にはならない。
日本戦没学生記念会編『新版 きけわだつみのこえ』岩波文庫・1995年
《酷薄な状況の中で,最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め,祖国と愛する者の未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち。1949年の刊行以来,無数の読者の心をとらえ続けてきた戦没学生たちの手記を,戦後50年を機にあらためて原点に立ちかえって見直し,新しい世代に読みつがれていく決定版として刊行する。》
昭和戦争文学全集編集委員会編『昭和戦争文学全集14 市民の日記』集英社・1965
収録作品=暗黒日記(清沢洌) /敗戦日記(高見順) /扇谷日記(島木健作) /悲食記(古川緑波) /偏奇館焼失(永井荷風)/ 炭焼日記(柳田国男) /開戦からの日記(高橋愛子) /終戦まで(吉沢久子) /白い翼の下で(大屋典一) /八月十五日まで(高橋やえ子) /罹災の夜(北条志津) /人間の魂はほろびない(北山みね)
中村光夫『戦争まで』中公文庫・1982年
《戦雲色濃くたちこめる昭和十三年秋から、若き著者は留学生としてフランスにいた。ヴァレリーの講義をきき、ひと夏を田舎町トゥルで過す――その心に深く刻みこまれた青春の日の旅の思い出を綴る。「今はむかし」「憂しと見し世」と本書で文学的回想記三部作完結。》
きたざわ尋子『溺れそうなリグレット』幻冬舎ルチル文庫・2008年
《斎木陸矢は、多額の資産を有するセレブな高校生。幼い頃に両親を亡くして以来ずっと一緒にいてくれた教育係・公家武士のことが大好きで、彼が所属するクリエイター集団のスポンサーにまでなった。ことあるごとに「本気で好き」と告げてはかわされるばかりの毎日、それでも健気に想いを伝え続ける陸矢を、武士はついに熱をはらんだ瞳で見つめて……!?》
桜木知沙子『演劇どうですか?』ディアプラス文庫・2008年
《騙されて丸め込まれて、大学の演劇サークルの助っ人となった絆次。舞台に上がるのは小学校の学芸会(馬役)以来だ。なのに客も大勢来る学校祭での出し物に出演する羽目に! 演じるのはヒロインと恋に落ちる役、ただしヒロインも男——。相手役の眞水は美形の元子役で、学内でも有名人だ。だが、とてもカンジが悪い。そう絆次が思っていたところ、実は……? 恋あり舞台あり宴会あり、キャンパスライフ・ストーリー♪》
中原一也『A・KI・RA~路地裏の迷い猫~』プリズム文庫・2009年
《「うち来るか? 飯くらい喰わせてやるぞ」繁華街で拾った少年・明良に、つい親切心を起こしたフリーライターの葛城。居候となった明良は人懐こくて遠慮がなくて、アパートの個性的な住人達ともすぐになじんでしまう。しかしある日、葛城が入手した写真――そこには、男達に弄ばれる明良が…。動揺を抑えられない葛城に、明良は部屋を出て行く。そこに現れたのは…! 愛に不器用な男と、愛を知らず彷徨う少年の胸に迫るラブストーリー。》
神江真凪『First Love』シャレード文庫・2008年
《初めて好きになった相手・瀬良に求められるまますべてを捧げた満ち足りた日々。それは聡史の心に消えぬ傷を残し突然幕を閉じた。六年後――高校で教師を務める聡史はモデルとなった瀬良と再会する。過去のことなどなかったかのように、もう一度つき合おうと告白してくる瀬良に怒りを覚えながらも、会えば封じ込めていた想いが疼きだす…。同じ過ちを犯すわけにはいかない。そう心に刻んで聡史は瀬良を遠ざけることを決めるのだが…。》
桑原伶依『危険な狼男』セシル文庫・2010年
《月のきれいな晩、コンビニからの帰り道で滝川真箏は小さな子犬をひろう。その可愛さに飼うことに決めたが、一夜明けてみると、なんと子犬は幼児の姿に! 耳と尻尾が生えた、明らかな狼人間の子供に、真箏はびっくり。話をきくと誘拐され、夜道に置き去りにされたらしい。しばらく幼児を保護することにするが、見つけにきた父親の狼男はとんでもない自己中なヤツで押し倒されてしまうが……!!》
稀崎朱里『唇の掟~マフィアと恋に堕ちて~』セシル文庫・2014年
《日本からドイツに馬術留学している茅哉。思うように成績があげられず腐っていたところ、シチリアからやってきた妙に迫力のある綺麗な男アルヴァロに出会う。彼はことあるごとに茅哉を姫と呼び、強引に口説いてくる。反発する茅哉だったが、甘く情熱的なアルヴァロに気持ちが傾いていくのをとめられなかった。だが彼の取引相手に誘拐され、彼の本当の正体を知った時…!! 》
美郷ほのか『暴君のプロポーズ』ショコラノベルスHYPER・2009年
《海野商事に勤める雪村馨は、ラクロア王国の第二皇子が社長をしているL・R・コーポレーションとの商談のために、上司と共にラクロア王国を訪れた。だが、商談相手として現れたのは、パブリックスクールに在学していた七年前に、ある言葉とキスを残して消えたかつてのルームメイト、フランツ・エメリッヒだった。この再会が偶然ではないことを知って戸惑う馨に、フランツは当然のように「愛してる」と囁きキスを仕掛けてくる。そんなフランツの意図がわからず、冷たく拒んだ馨は閉じ込められてしまい――。》
雪代鞠絵『仔猫は恋に甘くかみつく』ビーボーイノベルズ・2007年
《生徒会長の未知は、マジメすぎて家でも学校でもひとりぼっち。ある日生まれたての仔猫を拾った未知は、美形の獣医・沢渡と出会う。隙あらば、からかってくる沢渡に、未知はご立腹。けど、沢渡の仕事にかける情熱や、真摯な優しさに、未知の心は甘く疼いて…切ない片想いにヒリヒリと痛み始め――!?
「先生に喜んでもらえるように頑張るから。他の人とは絶対にしないで……」
愛を導くオトナの手は、熱くってドキドキして…❤ たっぷり書き下ろしアリ❤》
石津嵐『宇宙潜航艇ゼロ』ソノラマ文庫・1976年
《第2次大戦末期、沖縄海戦の最中に突如、150年後の世界にほうりこまれた日本海軍の潜航艇ゼロ。そのころ地球は、他の星からの侵略を受け絶滅寸前であった。月面にいる生き残りの日本人と協力して地球を救い、再び緑の星にしようと、ゼロの艇長森大尉の活躍が始まる。》
光瀬龍『暁はただ銀色』ソノラマ文庫・1975年
《クラスメートの理香は原因不明の幻覚になやんでいた。彼女にひそかに思いをよせる健は、それが理香の出生地に関係があるのではないかと気づいた。岩手の山村にとんだ健は、村の寺の伝説にあるうら山の地中深くうめられている不思議なカプセルをほりだした。数百年ぶりにそれを開けた時、中によこたわっていたのは、理香そっくりの女性だった。》
横溝正史『怪獣男爵』ソノラマ文庫・1976年
《瀬戸内海のまん中に男爵島という奇怪な離れ小島があった。世界的な学者でありながら、兄を殺して財産を奪い、ついに死刑に処せられた古柳男爵ゆかりの島である。夏の休暇でヨット遊びに出かけた小山田史郎たちは嵐に会い男爵島に漂着するが、島の断崖の上に立って吠え叫ぶ怪獣を目撃し、次いで瀕死の重傷を負った島の住人北島博士を発見する。かつて古柳男爵の協力者であった北島博士が死ぬ前に残したのは《怪獣ロロにやられた。古柳男爵は生き返った》という謎の言葉だった。》
後藤明生『虎島』実業之日本社・1978年
《俊才が放つ飄々たるユーモア
“内向の世代”の先頭をきる作者、その文芸活動の里程標となる記念碑的珠玉集。少年期からの身辺を悠々たる文体で捉え、人生の笑いと哀しみにふれる!!》
収録作品=窓の内外/黒兎/玄関の出来事/吾輩も猫である/火事の話/浅草詣で/智恵子の首/霊夢/虎島/わたしが生まれた場所/永興小学校の思い出/昨年の夏の事/越年/二人部屋/変容
日野啓三『蛇のいた場所』集英社・1980年
《青く凝縮した風景の奥からかすかな呼び声が聞こえる
イチジクの幹の割れ目で2匹の蛇がからみ合っている。――あの女の生まれ変わりか? 風はない。濃厚な気配があたりに漂う。記憶の闇を照射する初源の光を描き、著者独自の冴えをあますところなく示す作品集。》
収録作品=赤い月/細胞一個/蛇のいた場所/黒い水/雪女/窓の女神/果ての谷
日野啓三『聖家族』河出書房新社・1983年
《女性の時代の到来を告げる異色長編ロマン
奔放な若い娘の出生の謎に魅せられ、魂の闇をさまよう男が、遍歴の果に抱きとめた光景》
アンリ・ミショー『精神の大試煉』審美叢書・1976年
《アンリ・ミショーはここで「自我とは何か?」という問いに前人未踏の角度から踏みこんでいる。ヴァレリー、ジョイス、プルースト、サルトルらが企てた試みを、ミショーはそれらの誰とも違った仕方で進めている。自己の目に見えない心的現象を、電子顕微鏡の下で見る極微の世界のように見る方法を、彼は発明した。メスカリン等の薬を飲む実験だが、そこに彼は意識の麻痺をでなく、意識の加速状態を発見し、異常な緊張の持続によって、それを凝視する。僕らが〈自己〉というものについて持っている常識を打ち壊す、一つの内的な驚くべき世界がそこに展開する。》
大澤真幸『資本主義のパラドックス─楕円幻想』ちくま学芸文庫・2008年
《近代社会存立の仕組みには、自己否定へ導くダイナミズムが潜んでいる。本書では自身の中に他者を孕むその様を、二つ焦点(=中心点)をもつ楕円になぞらえ、近代の本性に迫る。他者という存在に投資することで初めて成り立つ資本制の構図を明らかにし、その起源を錬金術に求めた。近代の萌芽から帰結まで様々な題材を議論することで、我々の社会の有様を示す。現代社会の問題に真摯に向き合いつつその行く末を論じる、著者の多層的見識が十全に発揮された意欲的論考。》
アンリ・トロワイヤ『ふらんす怪談』河出文庫・1987年
《近年、『女帝エカテリーナ』をはじめとする多くの歴史評伝が日本でも紹介され、好評をはくしたフランスの作家、アンリ・トロワイヤによる、珍しい短篇集。どちらかといえばトロワイヤの余技に属すると思われるこの作品集は、死者や幽霊の話およびSF的な作品で構成され、結末に絶妙なおちをきかせたブラック・ユーモアあふれる洒落た幻想的コント集に仕上げられている。全七篇。》
収録作品=殺人妄想/自転車の怪/幽霊の死/むじな/黒衣の老婦人/死亡統計学者/恋のカメレオン
橘外男『ベイラの獅子像―橘外男傑作選Ⅲ』教養文庫・1977年
《とにかくこの作者には、小栗虫太郎、久生十蘭、香山滋らの秘境小説には見られぬ腥さが濃厚で、単なる探検・冒険にあきたらぬものが、新たなる生物を創造せしめたのであろう。》(中島河太郎「解説」より)
収録作品=博士デ・ドウニヨールの「診断記録」/野性の呼ぶ声/米西戦争の蔭に/ベイラの獅子像/棺前結婚
遠藤周作『わが恋う人は(上)』講談社文庫・1990年
《霧の軽井沢で雑誌記者秋月美子がめぐり会った男は、豊臣秀吉の家臣小西行長の子孫だった。戦国のならいによって夫との仲を裂かれた行長の娘たえは、別離に際して男女の雛人形を夫と分けあったという。女雛に託された悲しみと呪いが、四百年の時を越えて現代に甦える恐怖の物語。サスペンス大作。〈上下二巻〉》
遠藤周作『わが恋う人は(下)』講談社文庫・1990年
《妻ある人・小西への愛に動かされた美子の、四百年も別れ別れになっていた男女の雛人形を再会させようという記事は大反響を呼んだ。そして女雛の持ち主に次々と起こった恐ろしい事実が明るみに……。不倫の愛の行方と、現実の深層心理学では説明のつかない“生まれ変り”の秘密を追う遠藤文学の異色長編小説。》
吉行淳之介『美少女』新潮文庫・1975年
《星と月の刺青をもつという混血の美少女・三津子が突然失踪した。彼女の行方を追う放送作家の城田祐一は、手掛りを求めて近づいた女たちの太腿に、何故かみな同じ女王蜂の刺青があるのを見る。彼はこの不可解な刺青の謎を探りはじめるが……。
都会的センスで洗練された軽妙洒脱な文体と、ミステリアスな手法で、複雑にもつれあう人間関係と、屈折した愛の心理を解きあかす長編。》
横田順彌『宇宙ゴミ大戦争』ハヤカワ文庫・1977年
《ところが、横田くんの「パロディSF」は、もともと「パロディであるSF」をふまえて、さらにこれをパロディ化したものです。いわばP²――「パロディの自乗」SFなのです。同人誌の仲間うちの楽屋落ちコラムならともかく、こう言うもので、一応「ちゃんとした読ませるSF」を完成させた、と言う点で、横田くんは、前人未到の事をやってのけたのです》(小松左京「解説」より)
収録作品=友よ、明日を……/かわいた風/宇宙ゴミ大戦争/謎の宇宙人UFO/決戦!! スペース・オペラ/ミルキー・ウェイ/アンドロメダの少年/星盗人/星ぶとん/大マゼラン星雲の小人/金色の海/プラネタリウム共和国/星花火/オリオン座の瞳/信号機/ブラック・マント/手品の夜/終電車/ナイト・プロジェクト/銀色の電車/動物園の悲劇/地球栓/郵便ポスト/白い月/風船計画/ブランデーの香り
半村良『魔人伝説』ノン・ノベル・1993年
《1999年初冬。少年大出敬は新宿超高層ホテル上層階の窓ガラスを飛散させた。地上から、手を触れずに……。やがて強大な人心操作能力を獲得した大出は、ある有力財界人につけ入り、医療業界に進出。その矛盾を打破する彼の医療システムは、急成長を遂げた。反対勢力の放つ刺客を事前に察知して退けた大出は、ついに政界支配を決意したが……。超能力者大出敬の真の狙いは? 人類が突入した新しい段階とは? 疲弊した現代資本主義社会の前途に警鐘を鳴らす衝撃の問題作!》
中島河太郎編『骨まで凍る殺人事件―新青年傑作選集Ⅲ推理編3』角川文庫・1980年
《この〈「新青年」傑作選集Ⅰ~Ⅴ〉は、大正から昭和にかけて時代の最先端にあった風俗小説雑誌「新青年」に掲載した作品から、傑作五十篇を選び、全五巻に編集しました。
読者の方々には、第Ⅰ巻から第Ⅲ巻の推理編で、当時の名探偵たちの粋な推理を昧わっていただきます。そして第Ⅳ巻の怪奇編では読者をゾッとさせる妖気の世界に誘い、第Ⅴ巻のユーモア・幻想・冒険編で奇想天外な世界に遊んでいただけるよう配慮してあります。
永遠に古くなることのない傑作ばかりを集めたファッショナブルなこの〈「新青年」傑作選〉で、あなたは時のたつのも忘れてしまうでしょう。》
収録作品=振動魔(海野十三)/カナカナ姫(水谷準)/監獄部屋(羽志主水)/完全犯罪(小栗虫太郎)/偽悪病患者(大下宇陀児)/赤いペンキを買った女(葛山二郎)/地図にない街(橋本五郎)/二川家殺人事件(甲賀三郎)
山田正紀『神獣聖戦― Perfect Edition(上)』徳間書店・2008年
《週刊新潮(11/6号)の[ブックス]で「これは間違いなく、小松左京『果てしなき流れの果に』にも匹敵する新時代のオールタイムベストだ」と紹介されています。。
鏡人=狂人、人類から派生したミュータントともいうべき存在。人類とその中間種である悪魔憑きとの時空を越えた戦いが始まる…。伝説の本格SF巨篇、遂に浮上。既存の中短篇の加筆修正&再編集に新作を加えた1冊。》
山田正紀『神獣聖戦― Perfect Edition(下)』徳間書店・2008年
《ぼくは、神話を想い出しているのか、それとも神話を生きているのか…? 押井守氏が「強力無比な妄想に、どこまで耐えられるか。すべての読書人はその挑戦を受けよ」と激賞した伝説の名作本格SFが、ついに文庫化。1983年の山田正紀と“現在”の山田正紀。本書は四半世紀の時を隔てた二人の天才作家の合作にして、完全なる新作である。
出版社からのコメント
押井守氏が激賞した本格SF巨篇が遂に文庫化。強力無比な妄想に、どこまで耐えられるか。全読書人はその挑戦を受けよ!》(文庫版内容紹介)
マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー『蒸発した男』角川文庫・1977年
《取材でハンガリーを訪れたルポ・ライター、アルフ・マトソンは、そのまま消息を絶ってしまった。ハンガリーを出国した形跡もない。
この失踪事件が表沙汰になれば、両国の関係にひびが入りかねない。単身ブダペストに飛び、マトソン蒸発の真相を探るのが、マルティン・ベックに課せられた使命だった。
ベックはドナウ河畔に宿をとり、コルベリからの情報をたよりに、マトソンの愛人だという女性を訪ねた。だが彼女はマトソンなど知らないという。捜査は最初から壁に突きあたった。やがてベックは、執拗に彼をつけねらう尾行者の存在に気づいた…異国ハンガリーを舞台に描く、シリーズ初期の代表傑作!》
マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー『サボイ・ホテルの殺人』角川文庫・1982年
《スウェーデン南端の町、マルメ。サボイ・ホテルの奥まった部屋で、男女7人の客が晩餐の卓を囲んでいた。
ホスト役の初老の紳士が立ちあがり、スピーチを始めて間もなく、室内にボンと小さな音が響いた。紳士は豪華な料理に顔を埋めるように突っ伏した。
銃撃だった。しかも撃たれたのはスウェーデン財界の大立物、パルムグレン! 混乱のホテルから犯人は悠然と立ち去っていた。
過激派の凶行か、企業間の暗闘か? 捜査に当たるマルティン・ベックの前に、やがて明らかにされるのは、この大資本家の冷酷な面貌だったが…。
マルティン・ベック=シリーズ第6作。》
マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー『密室』角川文庫・1983年
《銃創も癒え、ベックは15か月ぶりに登庁した。警視庁は連続強盗事件の発生で大騒ぎの最中。ベックは特捜班の激務から外され、比較的らくな仕事に回された。孤老の変死事件である。
その腐乱死体はアパートの一室で発見された。孤独な老人の自殺は珍しいことではない。誰もが簡単に考えていた。初動捜査もずさんだった。ベックは、きわめて重大なことが見落とされているのに気づいた。老人の胸を撃ちぬいた拳銃が室内にはなかったのだ。部屋は完全な密室だというのに――
社会からも捜査陣からも忘れられた事件を、ベックは丹念に洗ってゆく。一方、神出鬼没のギャングを相手に、ラーソンたちの苦闘が続く。そして、二つの捜査は意外な方向に進展して…。》
ジャン=ピエール・リシャール『マラルメの想像的宇宙』水声社・2004年
《詩人の書き記したものほとんどすべてを、断簡零墨にいたるまで一望のもとに置き、全体的読解によって「隠された同一性」を浮き彫りにする、「文学についての文学」にして「テーマ批評」の最も力強い試み。ヌーヴェル・クリティックの金字塔。》(「BOOK」データベースより)
《マラルメのテクストのなかに「隠された同一性」を浮彫りにするテーマ批評=ヌーヴェル・クリティックの最も力強い試み。《リシャールとともに〈真の文芸批評〉が姿をみせる。必読である》(蓮實重彦)。》
ヘミングウェイ『われらの時代に』福武文庫・1988年
《第一次世界大戦に席捲され、暴力と死の翳におおわれた「われらの時代」の行き場のない不安と焦躁、そこからの脱出の苦闘を、日常生活の断片のスケッチによって描き上げた初期傑作短篇集。ドス・パソス、F.S.フィッツジェラルド、フォークナーら「失われた世代」の聖書として、当時の若い読者の圧倒的な共感を呼んだ。》
マルセル・エイメ『クールな男』福武文庫・1990年
《「人間の連帯などいかに嘘っぱちかを暴力的なまでの明白さにおいてとらえるためには、二十歳の頃に一度浮浪者になってみることが必要だ」―刑務所を出て冷酷非情な強盗団に身を投じ、人間の善意も死に対する宗教的な畏怖も何一つ信じないクールな男を描いた表題作ほか6篇収録。》
収録作品=こびと/エヴァンジル通り/クールな男/パリ横断/ぶりかえし/われらが人生の犬たち/後退
島田一男『恋文泥棒』徳間文庫・1987年
《京都の古刹で世をしのぶ尼僧のひとり息子・松下義夫が、奥伊豆天城山中で車もろとも断崖から転落死。さっそく現場に飛んだ新京都日報東京支社の記者・江藤は、松下が泊ったモテルのフロント係から、「白いオーバー、白い帽子の女が車に同乗していた」との情報を入手。しかも松下は、五通の恋文が入った封筒をフロントに預けたという。白いオーバーの女は何者か? 恋文に秘められた謎は? 長篇推理小説》
小林信彦『本は寝ころんで』文春文庫・1997年
《『カラマーゾフの兄弟』も『富士に立つ影』もすべて寝ころんで読んだのです――。読書のプロにして、面白本探しの名人がその読書日記を大公開。あわせて、ベストテン嫌いで有名な著者が初めて選ぶ、海外ミステリから日本の都市小説の「他人に教えたくない面白本ベスト50」も併載のブックガイド・エッセイ。 解説・北上次郎》
鹿島茂『「レ・ミゼラブル」百六景』文春文庫・1994年
《題名とあらすじぐらいは知っていても、きちんと読んだ人のだれもいない本の代表格が「レ・ミゼラブル」。わけてもヴィクトル・ユゴーは“脱線”の作家、ストーリーと関係ないところがいちばん面白いのです。時代の姿をうかがわせる精緻なオリジナル木版挿絵をふんだんに挟み、細部を楽しみながら名作を語った、興趣つきない好著。》
W・S・ベアリング=グールド『シャーロック・ホームズ―ガス燈に浮かぶその生涯』河出文庫・1987年
《この本はなんとシャーロック・ホームズの生涯を、ホームズ物語とその周辺の資料から再構成してしまったというホームズファンもびっくりの奇書である。「注釈つきシャーロック・ホームズ全集」で有名なシャーロッキアン、W・S・ベアリング=グールドによって完成されたこの架空の伝記は、ホームズ関係の古典として、ホームズファンの間でつとに有名である。ファン必携の名著ここに復刊!!》
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