『富士山麓・晩年』は佐々木敏光(1943 - )の第2句集。
作者は「鷹」を経て個人誌「富士山麓」発行。
歳晩や鼻歌いつか第九へと
雲海の下はわが里富士登る
万緑の一角揺れて友来たる
老人力
堂々と財布忘るる祭かな
カーブ曲がりそこねる
自転車がゆつくり落下谷紅葉
昔ギロチンによる処刑がおこなはれてゐた広場
コンコルド断首の魂(たま)のごとき月
氷上をすべり歩きの鴨真顔
死者たちの声美しき虫の夜
秋夕べ富士隣人のごとく立つ
春愁や草にねころび富士仰ぐ
絶壁に春の眼(まなこ)がありて象
動物園うらの林や百千鳥
裏の空き地
日向ぼこ終へてカモシカ森に消ゆ
富士山に見おろされつつ納税す
岸辺騒(さう)春の鮒らの交尾かな
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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