2017年10月
書肆麒麟
『翼の影』は三丸祥子(1957 - )の第1句集。栞文:澤好摩、横山康夫。限定250部。
作者は「円錐」会員。
春泥や磨崖仏まであと少し
数へ日の落暉にそまる駅舎かな
春浅し重き引戸の外郎屋
蟷螂のぎりりと回す地平線
鉱山の跡かがやけり猫じやらし
螻蛄鳴くや地球は月の地平より
尾根越ゆる角鷹(かくたか)つひに羽搏かず
雛の夜の仏間灯りのさんざめき
山々は色を選り合ひ笑ひあひ
彼の地では此の地が彼の地秋出水
空砲の音に影ある枯野かな
捨て山や捨て田や葛は花盛り
爆音に慣らされ柵の烏瓜
冬日差す三和土に猫が老いてゐる
坂はみな海に果てなむ寒茜
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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