『海の音』は友岡子郷(1934 - )の、未完句集を含む『友岡子郷俳句集成』を除くと第10句集。
作者は「雲母」同人。
広島 六句 から
流れ藻のごとき被曝衣夏夕日
父もまたひとりの離郷法師蝉
良夜なりときおり潮を噴く貝も
初凪や隠れ礁(いくり)に魚影群れ
向き合うて別れのさまに梅雨の薔薇
桔梗やひとり欠ければ孤りの家
壺の鶴首ほどにさみしき霰の日
文手渡すやうに寄せくる小春波
朽ちかけの木橋にさくらうぐひかな
魚島の季(とき)はどの子も走るなり
夭折なれば
母を知らねば美しきいなびかり
友の訃ははるけき昨日きんぽうげ
葩(はなびら)のごとき水母を槽に飼ふ
帰燕らも大渦潮を渡りしや
冬麗の箪笥の中も海の音
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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