地元の図書館が工事で12月まで閉館してしまうため、何やかや借りてきた。
『数学する精神』の加藤文元先生は、今年も行なわれる二日間ぶっとおしの数学イベント「MathPower 2017」で出番が隣り同士となる予定(私は「数学俳句」コーナーで講評などをやります)。
丸田麻保子『詩集 あかるい時間に』、たなかあきみつ『詩集 アンフォルム群』は著者からいただいたもの。感謝します。
今月は病的な眠気はさほど出ずに済んだので、それなりに冊数だけは捗った。後半、筒井康隆の再読がやたら並んでいるのは一種の「里帰り」。
実家に住んでいるのだが、周りの街並みは何もかも壊されていくばかりで何も残らず、本屋もほぼ全滅し、土地そのものよりも、子供の頃買った本の現物の方が郷愁の対象になっているのだ。
角川文庫の筒井康隆(装幀は杉村篤)、眉村卓(装幀は木村光佑)作品などは、小さなショッピングモールに入っていた「光文館書店」という店の空間の記憶と結びついている。
中野美代子『日本海ものがたり―世界地図からの旅』岩波書店・2015年
《『西遊記』,『ガリヴァー旅行記』,ラペルーズの大航海,…….斬新な切り口で新たな日本海像を描き出す.
わたしたちは日本海を内海のように考えてはいないだろうか.だが,他者の視点を借りて見てみると,そこにはまったく違う姿が浮かびあがる.『西遊記』,『ガリヴァー旅行記』,久生十蘭,ラペルーズ,エーコ,…….日本海に連なる多彩な著述をめぐりながら,広やかな地平へと思考を誘うエッセイ.(図版多数)》
早川書房編集部編『海外SFハンドブック』ハヤカワ文庫・2015年
《SFに興味があるけれど、どの作品から読めばいいかわからない人、読書の幅を広げたい人、最近のSFはわからないと思っている人、そしてもちろんSFが大好きなあなたへ――本書は『ソラリス』から『火星の人』まで海外SFの新たなスタンダードをご紹介したガイドブックです。巨匠の作品から最新の必読作まで全100冊を選定し紹介するガイド、SF作家のエッセイ、完全保存版のハヤカワ文庫SF全作品データを収録》
玄侑宗久『釈迦に説法』新潮新書・2004年
《一つの人生観に縛られていませんか? 目標や希望の実現に向けて「頑張る」ことに囚われすぎていませんか? 苦悩した青春時代、禅僧を目指した修行時代、禅僧と作家の二束の草鞋で歩む現在――。幾多の経験を通して、身の回りの出来事や、世間を騒がせた事件に触れながら、息苦しい世の中を、「楽」に「安心」して生きていくきっかけを教えてくれる。一話一話、読むほどに、心が少しずつ軽くなっていく。》
細野晋司『グラビア美少女の時代』集英社新書・2013年
《細野晋司 山下敦弘 仲俣暁生 濱野智史 山内宏泰 福川 芳郎 鹿島茂
歴史的写真×約200点収録
彼女はなぜ神話になったのか?
学生・社会人が毎週木曜日の発売を心待ちにする青年コミック誌「ヤングジャンプ」。二〇年前、ある少女の写真が表紙&巻頭を飾った号から同誌の驀進は始まった。本書は写真家、編集部、読者が一体になって生み出した、写真表現としては世界に類を見ない〈グラビア〉という文化を、アイドル論、出版文化史、メディア、写真表現など、様々な角度から考察。時代のミューズとなったアイドル たち、綾瀬はるか、相武紗季、鈴木亜美、市川由衣、夏菜ほか、読者が忘れられない約二〇〇点の貴重な写真も収録。》
網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』ちくま学芸文庫・2005年
《日本が農業中心社会だったというイメージはなぜ作られたのか。商工業者や芸能民はどうして賤視されるようになっていったのか。現代社会の祖型を形づくった、文明史的大転換期・中世。そこに新しい光をあて農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が、貨幣経済、階級と差別、権力と信仰、女性の地位、多様な民族社会にたいする文字・資料の有りようなど、日本中世の真実とその多彩な横顔をいきいきと平明に語る。ロングセラーを続編とあわせて文庫化。》
マイケル・モナスティルスキー『フィールズ賞で見る現代数学』ちくま学芸文庫・2013年
《フィールズ賞は「数学のノーベル賞」とも称されるほど、数学界において権威のある賞である。本書は第一回(1936年)受賞者のアールフォルスとダグラスから、「ポアンカレ予想」を解いて2006年に受賞したペレルマンまで、主要な受賞者たちの業績を紹介。賞の提唱者であるジョン・チャールズ・フィールズの生い立ちや、歴代受賞者一覧・参考文献など、歴史的記述・資料類も豊富。コンパクトな本ながら、フィールズ賞の全容と現代数学の最先端を展望することのできる一冊。》
春日武彦『残酷な子供 グロテスクな大人』アスペクト・2006年
《子供を殺す大人、大人を殺す子供。その、信じがたい「幼稚さ」と「狡猾さ」は、どこからやってくるのか?イノセントとナルシズムの危うい現実を精神科医の目で読み解く!
子供は純粋で、大人は成熟していくものだと思いたい。しかし、それを許さない現実があるとき、我々は、自らのグロテスクさと向き合わなければならない。》
水島忍『キスも悪夢も愛のせい』ガッシュ文庫・2008年
《おせっかいな兄の紹介で冴島心霊相談所という怪しげな職場で働くことになったオレ・俊彰。所長の冴島は霊障に苦しむ人々を助ける心霊カウンセラーだというのだが…胡散臭すぎる。更にそいつに、超・霊媒体質(ていうか冴島がそう言った!)のオレとは運命の出会いだ、霊を浄化するためだからと訳の分からないままHなことをされてしまう。一見クールで格好良い冴島は、実は毒舌でドSで客と幽霊にばかり優しいヘンタイ。警戒心バリバリだったけど、霊にとり憑かれた時だけ優しい冴島にトキメいちゃって!?》
久我有加『明日、恋におちるはず』ディアプラス文庫・2006年
《容姿よし、勉強も運動も料理もできる完璧な創吾と、カワイイ見た目ながら中身はオトコマエな夏海。幼なじみの二人の関係は、母を亡くし泣いてばかりいた夏海を創吾が側で慰めてくれた四歳の頃から変わらなかった。だが最近夏海は、創吾の過保護ぶりがどうにも気に入らない。正直うざい。では自分は創吾に離れてほしいのか? 疑問を抱き始めた矢先、創吾に“秘密”が出来て……?
創吾視点の続篇+書き下ろしも収録。》
きたざわ尋子『月のガラスと共犯者』白泉社花丸文庫・2008年
《保険などの調査を請け負う仕事をしている瀬良彰人は、半年前、家の近くの橋の上で雨の中、欄干に凭れ佇む少年と出会う。合鍵を渡し自由に出入りさせていた少年は真砂という名前以外、名字も通っている大学も明らかにしようとしなかったが、瀬良は真砂の祖父が巨額の脱税に絡んでいることを調査から知る。上司の令を受け、その立場を利用し、恋人になったふりをして真相を探ろうとする瀬良だったが、はじめから真砂に対する気持ちは……。》
絓秀実『文芸時評というモード―最後の・最初の闘い』集英社・1993年
《月々の文芸誌掲載全作品を取り上げて、縦横2軸の座標による仮借ない採点を施し、文壇内外に賛否激論の渦を巻き起こしたスーパー文芸時評の単行本化。》(「BOOK」データベースより)
マルグリット・デュラス『戦争ノート』河出書房新社・2008年
《作家としてデビューする前の戦中戦後に書き付けていたデュラスのノートが4冊見つかった。その後の作品群の多くの原点となる、真実の「自伝」ともいえる貴重な記録。》
トマス・ピンチョン『LAヴァイス』新潮社・2012年
《後頭部に強烈な一撃。目覚めればすぐそこに死体が――おいおいオレが逮捕なの? サーフ・ミュージックが鳴り響くなか、ロスのビーチをラリッ放し私立探偵ドックがゆく。かつて愛した女の面影を追ううちに、土地とドラッグ、洗脳と国家権力が織りなす闇は……。2009年刊行のポップでノワールな最新作が、早くも日本上陸!》
五木寛之『午前零時の男と女』角川文庫・1974年
《午前零時。――深沈たる大都会の闇の中から姿を現わした、15人の男と女。
テレビマン、モデル、評論家、歌手、イラストレイター、女優、編集者等、いずれ劣らぬ個性と仕事で、今を時めく才男才女。
夫婦、セックス、テレビ、民族、ポルノ、演歌、エトセトラ。
各人各様のテーマで交わされる、ウィット豊かな、実のある会話に夜は更けて……。
五木寛之対話シリーズの第2集。》
五木寛之『わが心のスペイン』角川文庫・1973年
《戦争があり、人が死に、そして街が焼かれ、廃墟に闇市や青空があり、娘が多く売春をした。だが終ったものはどこにもない。変ったのは何ひとつない。スペイン戦争についても、事は同じである。私にとってスペインは筑豊であり、カタロニアは半島であり、そしてマドリッドは東京であり大阪であると、私は思う。
スペイン戦争が終らぬように、筑豊の闘いも終ることがなく、私個人にとっての引揚げもまだ終了していない。……〈私の中のスペイン戦争〉より》
コナン・ドイル『回想のシャーロック・ホームズ』創元推理文庫・1960年
《第一短編集「冒険」につづく第二短編集「回想のホームズ」は十一編の作品を収録する。名馬の失踪にからむ殺人をあざやかに解決する「銀星号事件」を筆頭にホームズがはじめて手がけた「グロリア・スコット号」、怪奇味の横溢する「マズグレーヴ家の儀式書」、天才的犯罪者モリアーティ教授とともにホームズが滝壺に落ちて生死不明となる「最後の事件」等、謎の創意と物語の展開、そして意外な解決において、いくど読んでもあかせない魅力をそなえた黄金の短編集である。》
収録作品=銀星号事件/黄色い顔/株式仲買店員/グロリア・スコット号/マズグレーヴ家の儀式書/ライゲットの謎/まがった男/入院患者/ギリシャ語通訳/海軍条約事件/最後の事件
田中光二『南十字戦線』講談社文庫・1981年
《速水澪子は、理不尽な巨大資本から南太平洋の孤島を守るために、1人1万ドルで世界各地から7人の“冒険軍人”を雇う――ベトナム戦争帰り、冒険家、殺し屋、爆発物専門家、ナイフ使い、過激派くずれ……。砲弾飛び交う海戦、ヘリとの戦闘、ジャングルでのゲリラ戦と、スリリングに展開する冒険ロマン長篇。》
丸田麻保子『詩集 あかるい時間に』ふらんす堂・2017年
《◆第一詩集
こんなふうに、ひとりの詩人が、そして一冊の詩集が、ひとつの大事なことのために存在するという例は、最近では稀である。秀逸なアイディアで良質のユーモアをたたえて書かれている「餃子物語」や「一月」のような作品にも、この核心の変奏となっている側面があると私は考える。
(栞より・福間健二)
夢の詩に挟まれたこの複雑な、説明が到底追いつけない既にしっかり立ち上がった作品世界に、これ以上わたしが無駄な言葉を付け加えるのも憚られるから、まずはその真価が恐ろしく発揮され始める2章の終わりまで、できれば止まらず、しかしじっくりと読んでもらいたい。
(栞より・暁方ミセイ)
◆収録作品より
もう外も、すっかり暗くなったのだと、部屋のなかにいるのだと思っていた。見えないけれど耳で決めてこれは雨だと思う。乗りこんだ覚えのない船のなかにいつしか自分はいて、足下がおおきく揺れだすとは、そんな夜があるとはだれも教えてくれなかった。
いいえ、船ですらなかった。夜にもなっていなかった。雨も降っていなかった。まだあかるい時間に、部屋もからだも激しく揺さぶられていた。窓の外の景色がどんどん変わっていった。自分は夢のなかにいて、見慣れた風景に水がなだれこんできた。そう思っていたかったが、水はこんなにも現実だ。誰の顔も思い浮かべなかったが、空には星が瞬いていた。
「あかるい時間に」より》
荒巻義雄『神州白魔伝』角川文庫・1982年
《江戸期の天才、平賀源内は、千軒岳の金山の調査をきっかけに、その地に“白魔”なる怪物が棲むことを知る。
――それは果たして怨霊の化身か?
調べるうちに源内は、それは太古より棲みついていた先住民が、どこかにある“時穴”を通ってきたものと推理する。
が、謎はさらに奇怪。白魔族の流れをひくと思われる遊女朝露と源内との間に産まれた子供の怪! 源内によく似た老人が予言する源内の死! 源内はついに時間流を旅する“時駕龍”作成を決意した……。
超古代世界“無宇”の謎に迫る、荒巻義雄の長編伝奇SFの傑作。》
阿刀田高『頭の散歩道』文春文庫・1983年
《キャバレーの反対なーんだ? 「レバ焼き」。では、地球上の地点で地球の中心からいちばん離れている場所はどこか? 答えは……この本を買って読んで下さい。言葉遊び、はめ絵、謎とき、パズル満載、マイコンに凝るよりこれ一冊でアタマが10倍良くなる! 彼女と読めば100倍アタマの良い子が生まれる!? 阿刀田的遊戯の世界。》
加藤文元『数学する精神』中公新書・2007年
《数学における「正しさ」とは何だろうか。数学の公式や証明と言えば絶対的に正しいもので、揺るぎない「神の知」だと思っている人も少なくないだろう。しかし数学を創ったのは紛れもなく人間であり、そうである以上、究極的には仮説的で暫定的であることを免れ得ない。ならば、多くの人が信じる「真の正しさ」や「美しさ」とは、数学という営みにおいてどんな意味を持つのか。拡がり続ける豊饒な数学の世界への招待。》
杉本苑子『海の翡翠』旺文社文庫・1986年
《桓武・平城・嵯峨と変転する時代の流れと、皇位継承にからむ皇室・藤原氏の骨肉相食む相剋の中に,真摯で清廉な生涯を通す高岳親王を描き切った表題作ほか、新たな視点から源義家・安倍貞任の人間性に迫った「みちのく戦記」、俊寛僧都の悲劇を描く「朝焼け」、「罠」、「船と将軍」を収録した傑作時代小説集。》
収録作品=海の翡翠/みちのく戦記/朝焼け/罠/船と将軍
斎藤美奈子『あほらし屋の鐘が鳴る』文春文庫・2006年
《失楽園、もののけ姫、バイアグラ、ゴーマニズム宣言など、平成のおじさんたちの“勘違い”を、斎藤美奈子が「なにをゴチャゴチャゆうとんねん、あほらし屋の鐘が鳴るわ」とカーン。「女性誌探検隊」では、「an・an」から「暮しの手帖」まであまたある女性誌を俎上に、これまた的確なる情勢分析をほどこします。 解説・アライユキコ》
松岡裕太『若様に縛られたい』ガッシュ文庫・2012年
《「全裸になって床に跪いて、俺に永遠の愛と忠誠を誓ってもらおう」
学年首席、次期生徒会長と噂される有能な人物・善に一目惚れしてしまった甲介。しかし、善の裏の顔は…伝説の縄師の父と元奴隷の母の間に生まれたSMサラブレッド! 「甲介のしなやかで細い身体に縄をかけて、その可愛い顔を涙でグチャグチャにしてやりたい…」なんてうっとり言われて、それでもちょっとキュンとしちゃうなんて…!?
ハイテンションコミカル緊縛ラブ!》
田辺聖子『おせいさんの落語』角川文庫・1977年
《男女間の色事ではじまり、人情の機微にふれ、煩雑な世事を皮肉り、時に説教をし、やっぱり男と女のお話に果てる。
卓抜した発想を、軽妙な大阪ことばで仕上げた笑いのフルコース。洒落た味わいのなかに、醒めて、したたかな文明批判がにじみでる。
御存知おせいさんが新境地を拓いた、新作上方落語十一篇を収録。》
収録作品=貸ホーム屋/愛のロボット/ツチノコ女房/いまどきの年寄り/すずめ女房/草ひき/鬼神/新・モモタロー/一寸法師とお姫さま/舌切婆/ずくずく
杉本苑子『残照』旺文社文庫・1987年
《水戸天狗党の蜂起を背景に、幕府最後の将軍職をひきうけ、三百年の政権を、残照の美しさの中で終わらせるべく努力する徳川慶喜の苦悩を描く表題作ほか、傲慢な幕府御典医と謹直な旗本の陰惨な争いを活写する「墓石を打つ女」、茶店で偶然将軍に声をかけられたため数奇な運命に弄ばれる村娘の半生を語る「菜摘ます児」など、江戸の武士・庶民の生活を流麗に綴る傑作七編を収録。》
収録作品=墓石を打つ女/菜摘ます児/残照/影絵/みぞれ/癖馬/ああ三百七十里
眉村卓『強いられた変身』角川文庫・1988年
《人間は自分が認識できる世界で思考をめぐらし行動する。しかし、突然そこに、まったく認識や理解を超えた非日常が出現したらどうなるのであろうか? 急激な価値観の変化に対応できるであろうか? 刻々と迫り来る“変身”へと貴方を導く――。
狂いはじめるさまざまな認識を見事に描く眉村SF、殊玉のオリジナル短編集7編。》
収録作品=長い夢/気楽なところ/セリョーナ/古い録感/代ってくれ/真面目(まじめ)族/オレンジの旗
石原藤夫『銀河を呼ぶ声』徳間文庫・1981年
《星の光りの異様な揺らぎと、電波に乗って天空を渡ってきた二進符号の列――銀河の一角から送られるその信号は、やがて天文学の初等知識、数学の基本定理などを図示しはじめ、宇宙での知的生命の存在を告げていた。そして、人類の期待と熱狂の中ですすめられた探査と分析は、ついに驚くべき事実を解明するにいたったのだ……。
最初の接触への期待と努力を描く表題作ほか、秀作ハードコアSF作品集。》
収録作品=時間と空間の涯/生きている海/銀河を呼ぶ声/解けない方程式/夢見る宇宙人/天使の星
小笠原みどり『スノーデン、監視社会の恐怖を語る―独占インタビュー全記録』毎日新聞出版・2016年
《日本の私たちも、すでに全面監視下にある!
米国の世界同時監視システムの真実を告発して世界を震撼させたスノーデンに、日本人ジャーナリストが初の長時間インタビューを敢行。スノーデンの日本での工作活動の全貌、民間企業を抱き込んで行う通信傍受の実態、世論操作と市民運動破壊の方法、日米関係の不平等、監視と戦争の危険な関係......現代の恐るべき支配のすべてが明らかになる。
「日本には二〇〇九年ごろに来て、東京都福生市で暮らしました。米空軍横田基地に勤務していました」
「日本で近年成立した特定秘密保護法は、実はアメリカがデザインしたものです」
「最も問われるべきは、地球上すべて人々のコミュニケーションを傍受する仕組みをつくりあげたことです」
「もし、日本の企業が日本の諜報機関に協力していないとしたら驚きですね」
「無差別監視はテロを防げずにいます。なぜなら根拠のある疑いによって的を絞り、被疑者を捜査していくのではなく、私たち全員を潜在的な被疑者として扱っているからです」「こうして秘密が民主主義のプロセスを腐敗させていくのです」
――――エドワード・スノーデン》
フィリップ・K・ディック『ヴァルカンの鉄槌』創元SF文庫・2015年
《20年以上続いた核戦争が終結したのち、人類は世界連邦政府を樹立し、重要事項の決定をコンピュータ〈ヴァルカン3号〉に委ねた。極秘とされるその設置場所を知るのは統轄弁務官ディルただ一人。だがこうした体制に反対するフィールズ大師は〈癒しの道〉教団を率いて政府組織に叛旗を翻した。ディルは早々に大師の一人娘を管理下に置くが。ディック最後の本邦初訳長編SF。》
東浩紀・北田暁大編『思想地図vol.5―特集・社会の批評』NHKブックス・2010年
《時代と対峙する「知」とは?
現代をとらえる思想の力を探る!
私たちは社会の中で生き、社会について語りながら、実は社会を掴むことの困難を抱えているのではないか。哲学・統計学・政治学など隣接領域の視点もふまえながら、90年代以降、社会批評の主役を担ってきた「社会学」を、もう一度徹底的に吟味する。思想地図第1期、ここに完結。
●討議「闘いとしての政治/信念としての政治」:姜尚中 + 北田暁大 + 野中広務 + 森達也
●鼎談「東京の政治学」:北田暁大 + 橋本健二 + 原武史
●論考:東園子、瓜生吉則、稲葉振一郎、遠藤知己、小島寛之、佐藤俊樹、菅原琢、永井均、橋爪大三郎、長谷正人、星野伸明》
豊田有恒『サイコキネシス大戦争 Part2』角川文庫・1988年
《SF超大作映画のメカ・テザイナーとして、CIAの超能カエージェントの女性と共にアメリカにやってきた霧生哲夫。交通事故のショックでサイコキネシス能力を身につけた彼と、そのスタッフは壮大なマヤの遺跡が眠るメキシコヘと向かう。
目的は撮影のロケハンと、極秘に入手した謎の絵文書から莫大な“マヤの秘宝”をさがすことだった。だが、KGBの超能力者集団カジンスキー機関が待ちうけ、エスパー同士の壮絶な闘いが展開された。“秘宝”とは? そのありかは? シリーズ第2弾。》
たなかあきみつ『詩集 アンフォルム群』七月堂・2017年
《いきなり夢の過剰投与
独自の美意識が炸裂する、詩で描く絵画。素早く強烈なタッチだけでなく、この詩人の持つ莫大な知識と、それを繊細に織り成す能力に圧倒される。》
眉村卓『C席の客』角川文庫・1973年
《妙な男が新幹線のC席にすわった。赤い髪をして鼻が高く、まっ黄色のブレザーを着ている。強烈に人目をひく男だ。印刷されてない白紙の本を取りだし、何分かおきにページを繰ってニヤニヤ笑っている。つぎの瞬間、ぼくはドキッとした。その男には、指が4本しかないのだ。乗客たちはまったく無関心、見向きもしない。ぼくは恐怖でしだいに冷や汗が出てきた……。
企業や社会慣習にもみくちゃにされる滑稽であわれな人間像、現代の盲点や落とし穴を鋭くえぐるSFショートショートの傑作集!》
収録作品=特訓/発明チーム/有望な職業/キャンプ/成功者/倉庫係/ヘルメット/使命/災難/ビルの中/C席の客/ディレクター/レジャー・パイロット/知識ロボット/職場/旧友/蘇生/審査委員/新人/美しい世界/来訪者/職住密着/ヒゲ/夜行列車/新広告/ミスター・カレー/自動管制車/降雪/音/理由/みんなの町/報告者/正義の使者/テレビドラマ/意欲/パーティ/監視員/スポーツ/模範社員/帰途/ロボット楽隊/日曜日/支配人/ホテル/住人/土地成金/自衛剤/校庭/拾得物/出勤/似合いの夫婦/青い市民証
眉村卓『出たとこまかせON AIR』角川文庫・1979年
《さあさあ皆さん始まりだよ!
ぶっつけ本番、出たとこまかせ!
ワルのり、気まぐれ、苦しまぎれ!
突飛で変てこりんで愉快なお話!
――そばつゆ甘いかしょっぱいか?
――過去は何色? そして未来は?
――金言、格言をウラから見れば?
SF的発想と、ユニークな知識が満載されたこの一冊で、あなたは楽しみながらインテリジェンスを磨くことができる。さあこの「出たとこまかせON AIR」に、ピタリとチャンネルを合わせてみましょう。》
筒井康隆『ホンキイ・トンク』角川文庫・1973年
《調子っぱずれの音程の狂ったメロディ、これをホンキイ・トンクという。
ある日、とつぜん、コンピューター技師の腕前は二流以下のおれに、海外出張の辞令が下った。安物のコンピューターを買い付けたバカジアに出向いて、設置するためだ。なにしろ、人口たった三万の小国だ。大国におもねた首尾一貫した政治は危険、という立場から、政策決定をコンピューターに決断させることになった。ところが、第一号の法律は、とんでもない頓珍漢な……。
〈機械〉が主役となったおろかな人間社会をパロディ化した傑作。他七篇。》
収録作品=君発ちて後/ワイド仇討/断末魔酔狂地獄/オナンの末裔/雨乞い小町/小説「私小説」/ぐれ健が戻った/ホンキイ・トンク
筒井康隆『筒井順慶』角川文庫・1973年
《あまり売れないSF作家のおれに週刊世紀から歴史小説「筒井順慶」の注文がきた。信長を本能寺で暗殺した明智光秀と秀吉が対陣したとき洞ヶ峠をきめこんだあの日和見順慶が、どうやらおれの祖先らしいのだ……。資料集めをするうちに知り合った順慶の直系の子孫だという帝子、女編集者の藤田電子とがもつれ、事件は意外な方向に!
ドタバタの中に鋭い現代批判をこめた表題作他、おかしなおかしな短篇3篇を収録。》
収録作品=筒井順慶/あらえっさっさ/晋金太郎/新宿祭
筒井康隆『わが良き狼』角川文庫・1973年
《トンネルを抜け出て過去の町ルピナスに帰ったキッドは、そこで老人と子供の姿しか見なかった。若者は活気のある新しい星へと移り行くのだ。昔の恋人から町を騒がせたあの懐しい悪漢ウルフがまだ生き残っている事を聞き、やっつけんと下町へくり出したが…。詩情ただよう表題作他、筒井文学の醍醐味あふれる傑作集!》
収録作品=地獄図日本海因果/夜の政治と経済/わが家の戦士/わが愛の税務署/若衆胸算用/団欒の危機/走る男/わが良き狼
筒井康隆『にぎやかな未来』角川文庫・1972年
《「市民のみなさん。このたび政府は、公共放送のCM料金を値上げすることにいたしました。…CMがうるさいからといって放送の途中でラジオのスイッチを切ると、罰せられます。…」
狂気じみたにぎやかな未来への警告を軽妙なタッチで笑いの中に描く短篇傑作集。》
収録作品=超能力/帰郷/星は生きている/怪物たちの夜/逃げろ/事業/悪魔の契約/わかれ/最終兵器の漂流/腸はどこへいった/亭主調理法/我輩の執念/幸福ですか?/人形のいる街/007入社す/踊る星/地下鉄の笑い/ながい話/スペードの女王/欲望/パチンコ必勝原理/マリコちゃん/ユリコちゃん/サチコちゃん/ユミコちゃん/きつね/たぬき/コドモのカミサマ/ウイスキーの神様/神様と仏さま/池猫/飛び猫/お助け/疑似人間(ロボットイド)/ベルト・ウェーの女/火星にきた男/差別/到着/遊民の街/無人警察/にぎやかな未来
筒井康隆『アフリカの爆弾』角川文庫・1971年
《電気製品販売会社のセールス兼集金人の私はアフリカの土人部落に派遣された。今や酋長の経済顧問として大変重宝がられている。この部落は、原始生活を観光に、ふだんはテレビ・電話を隠しているが、隣りのメカ国でミサイルを買ったから、さあ大変! 国連軍からミサイルを買おうと大騒ぎ…。S・F傑作表題作の他11篇を収む。》
収録作品=台所にいたスパイ/脱出/露出症文明/メンズ・マガジン一九七七/月へ飛ぶ思い/活性アポロイド/東京諜報地図/ヒストレスヴィラからの脱出/環状線/窓の外の戦争/寒い星から帰ってこないスパイ/アフリカの爆弾
筒井康隆『日本列島七曲り』角川文庫・1975年
《――この飛行機は革命的赤軍派の学生様御8名様御用達の栄を賜わり、一路北鮮へ参ります。……機長が浮き浮きした声で告げた。日本刀を抜いて威嚇する乗っ取り犯を、高倉健そっくりだといってはやし立てる農協さん。一味の女子学生に強姦された中年の乗客やらで、機内には、まるで乗っ取りに出会ったのが嬉しくてたまらぬ様子が充満していた。飛行機の乗っ取りが頻発すると、こんな現象も起こるにちがいない。鬼才・筒井康隆がハイ・ジャックを喜劇的に描いた表題作、ほか異色短編10篇収録。》
収録作品=誘拐横丁/融合家族/陰悩録/奇ッ怪陋劣潜望鏡/郵性省/日本列島七曲り/桃太郎輪廻/わが名はイサミ/公害浦島覗機関(たいむすりっぷのぞきのからくり)/ふたりの秘書/テレビ譫妄症
ジャック・ヒギンズ『神の最後の土地』ハヤカワ文庫・1986年
《インディオと白人の対立が続く第二次大戦前のアマゾン。流れ者の若きパイロット、ニール・マロリーは、密林の上空で第一次大戦の撃墜王サム・ハナと出会った。やがて彼はハナの空輸業に手を貸し始めるが、折しも大事件が勃発する。伝道団本部がインディオに襲われ、修道女たちが虐殺されたのだ。インディオを制圧すべく遂にブラジル政府軍が出動、政府に雇われたハナ、妹の修道女の安否を気遣う女性歌手ジョアナらと共に、マロリーも流血の闘いに巻き込まれていくが……。大自然を舞台に、情感豊かに描くヒギンズ初期の傑作航空冒険アクション》
ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』ハヤカワ文庫・1981年
《鷲は舞い降りた! ヒトラーの密命を帯びて、イギリスの東部、ノーフォークの一寒村に降り立ったドイツ落下傘部隊の精鋭たち。彼らの受けた任務は困難極まるものだった。この地で週末を過ごすチャーチル首相を誘拐せよというのだ。指揮官は歴戦の勇士シュタイナ中佐。味方は軍情報局の女スパイとIRAの兵士。死の危機が潜む中、イギリス兵になりすましたシュタイナらは着々と計画を進行させていった……。世界の命運を左右する極秘作戦の成否は? 使命達成に命を賭けた男たち。その勇気と不屈の闘志を雄渾の筆で謳う戦争冒険小説の最高傑作!》
西村寿行『蒼茫の大地、滅ぶ(上)』講談社・1978年
《突如、日本を襲ったバッタの巨大な群れは、東北地方で米、野菜を喰いあらし、人々をパニックに陥れた。不信、暴動、輪姦……最悪な事態をむかえ、対策は急を要した。しかし、政権を維持しようとする中央政府の出した結論は、東北六県を切り捨てる冷酷・非情なものであった。やむをえず、東北地方の県民による「東北地方守備隊」が組織され、中央との対立はついに限界に達する……! 空前絶後の想像力で描く、感動のスーパー・パニック・ロマンの傑作!》(角川文庫版内容紹介)
西村寿行『蒼茫の大地、滅ぶ(下)』講談社・1978年
《幅10キロ、長さ20キロにも及ぶ飛蝗の群団に襲われ、中央政府との対立を余儀なくされた東北六県は、ついに独立を宣言した。しかし、中央政府は武力鎮圧を重ね、悲劇は悲劇を呼ぶことになる。人は飢え、人心はついに野獣と化し、全てが滅びへと向かってひた走っていった。自然の凄絶さ、人間の生地獄……空前絶後の想像力で描き上げた、感動のスーパー・パニック・ロマン巨編。》(角川文庫版内容紹介)
山田詠美『ベッドタイムアイズ』河出文庫・1987年(文藝賞)
《――スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。ただし、それは私の体を、であって、心では決して、ない。――
日本人の少女と黒人の恋人との出会いと別れを、痛切な抒情と鮮烈な文体で描き、選考委員各氏の激賞をうけ「文藝賞」を受賞した話題のベストセラー。》
山田詠美『指の戯れ』河出文庫・1987年
《ピアニスト、リロイ・ジョーンズ。彼の指には才能がある。私はそれを知っていたし、それがこわかったのだ。
二年前に捨てたあの男、私の奴隷であった男のために今、愛と快楽の奴隷になるうとするルイ子。リロイの奏でるジャズ・ミュージックにのせて描く、愛と復讐の物語。》
ハンナ・アーレント『思索日記Ⅰ 1950-1953』法政大学出版局・2017年
《全体主義との闘争の過程で敢行された西洋政治哲学の伝統との対決の貴重な記録。現在の出来事に関する証言でもあり、アーレント理解にも不可欠の第一級資料。》
ハンナ・アーレント『思索日記Ⅱ 1953-1973』法政大学出版局・2017年
《思想的に最も多産な時期から晩年まで,28冊のノートに書き続けられた膨大な日記・完結篇。活動的生活と観想的生活を包含する独自の思考を記録したドキュメント。》
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