異常な眠気が出ることが少なくなってきたので、多少本も読みやすくなってきた。
半村良や小松左京が最近古本でぽつぽつ見つかるので、その辺を再読している。
保坂和志『遠い触覚』河出書房新社・2015年
《生と死、フィクションとリアル、記憶、感情、肉体、魂……2008年から2015年にかけて、作家・保坂和志が考え続けてきた、奇跡のような思考の軌跡。》
国枝史郎『十二神貝十郎手柄話』 国枝史郎伝奇文庫・1976年
《宝暦から明和安永へかけての名与力十二神貝十郎と、上州館林松平右近将監武元の庶子松平冬二郎との、敵対と、不思議な友情を、伝奇的手法で描く表題作。国枝史郎の作品群の中にあって、異色の心温まる快作。
他に、海賊船あり、秘密の洞窟ありのおとぎの世界を、快調のテンポで描く、痛快冒険談『加利福尼亜の宝島』を同時収録。》
収録作品=十二神貝十郎手柄話/加利福尼亜の宝島
坂口安吾『安吾史譚』角川文庫・1973年
《〈天草四郎は頭の悪いテロ少年〉、〈マセてヒネコビた少年頼朝〉、〈日本一の、大ゲサな歌よみ柿本人麿〉、――日本史を色どった個性的人物を、大胆な史観と鋭い人間洞察で縦横に論じ、その“裸の人間像”に肉迫した、坂ロ安吾の歴史エッセイ。》
池上英洋・川口清香『美少年美術史―禁じられた欲望の歴史』ちくま学芸文庫・2016年
《神々が愛したかわいくエロティックなクピドたち。古代の英雄や皇帝たちを狂わせ、歴史の運命を大きく動かした少年愛のめくるめく世界。中世キリスト教社会で、激しい抑圧のなか密かに紡がれた同性愛的嗜好。そしてルネサンス期を迎え、ふたたび花開く男たちの肉体美―。西洋美術には美少年を描いた傑作が数多く存在する。彼らはなぜこれほどまでに芸術家たちを虜にし、その創造力をかきたててきたのか?ときに勇ましく、ときに儚げに描かれたその姿に、人類のどのような欲望が刻み込まれているのか?アート入門としても最適。カラーを含む200点以上の図版とともに辿るもうひとつの西洋史。》
岡本裕一朗『いま世界の哲学者が考えていること』ダイヤモンド社・2016年
《IT革命とBT革命が人類の未来を変える? 資本主義は21世紀でも通用するのか? 世界が再び宗教へと回帰していくのはなぜなのか? 21世紀最先端の哲学者が描き出す人類の明日とは。AI、遺伝子工学、フィンテック、格差社会、宗教対立、環境破壊……世界の難問がこの一冊でクリアに解ける》
山田正紀『カムパネルラ』東京創元社・2016年
《宮沢賢治研究に生涯を捧げた母の死。遺言に従い、花巻まで散骨に訪れた僕は、物語と現実が混淆する異様な殺人事件に遭遇する。『銀河鉄道の夜』をモチーフとした傑作長編SF。》
G・K・チェスタトン『ブラウン神父の童心』創元推理文庫・1982年
《奇想天外なトリック、痛烈な諷刺とユーモア、独特な逆説と警句、シャーロック・ホームズものと双璧をなす短編推理小説の宝庫ブラウン神父譚。作者チェスタトンは、トリック創案にかけては古今の推理作家中でも卓越した存在である。まん丸な童顔には、澄んだ目がぱちくりしている。不格好な小柄なからだに大きな帽子と蝙蝠傘といういでたち。何処から見ても質朴で能のない貧相な坊さんにすぎないのだが、ひとたび事件が起きるや、ブラウン神父の探偵ぶりの鮮やかさ。快刀乱麻をたつように難事件を解決する!》
収録作品=青い十字架/秘密の庭/奇妙な足音/飛ぶ星/見えない男/イズレイル・ガウの誉れ/狂った形/サラディン公の罪/神の鉄槌/アポロの眼/折れた剣/三つの兇器
坂口安吾『私の探偵小説』角川文庫・1978年
《推理ファンをもって任じ、自ら「不連続殺人事件」「復員殺人事件」など不朽の傑作を生んだ坂目安吾の、推理小説に関する全エッセイを収めた。
“推理小説は、作者と読者の智恵比べを楽しむゲームである”を根本の解釈として、〈謎の解決の手がかりを全部読者に知らせること〉〈謎を複雑にするために人間性を不当にゆがめぬこと〉など、具体的諸ルールを説き、クリスティ、クイーン、横溝正史、高木影光ら内外作家の作品を縦横に論評する。
推理ブームの中で、作品の変貌・多様化が著しい今日、推理小説とは何か?の原点に触れた文章は、多くの示唆を含む。
ほかに、既成文学の権威に挑戦、戦後文学への新しい地平を切り拓いた、秀抜な文学評論20余篇を収録する。》
山下洋輔『ピアノ弾き即興人生』徳間文庫・2016年
《ジャズ界の巨匠が放つ文字版・交響組曲全8楽章! 疾風怒濤のジャムセッションの日々から、マル・ウォルドロン、セシル・テイラー、富樫雅彦、今村昌平、赤塚不二夫、タモリ、西江雅之、林英哲、浅川マキなど、各方面の達人との交流エピソード、ジャズとは何かという講演、旅にまつわる面白話まで、リズムにのってどんどん綴るグルーブ感はまさにジャズの即興演奏! 解説・菊地成孔。》
山口瞳選『競馬読本』福武文庫・1988年
《走ることを宿命づけられた生きもの、サラブレッド。ゴール前、胸を絞めつけられるような興奮。馬ひとすじに情熱を注ぐ職人。競馬に憑かれた人たちの夢をのせて、馬は直線を駆け抜ける――寺山修司、沢木耕太郎、古井由吉、鮎川信夫ら練達の筆が競う最強の競馬アンソロジー。》
収録作品=少年と見たシンザンの思い出(高橋三千綱)/人はなぜ競馬をするか(石川喬司)/運のつき(沢木耕太郎)/モンタヴァル一家の血の呪いについて(寺山修司)/馬主志願(東君平)/世界一の“無事是名馬”がいた(益田) (岩川隆)/かくて栄光を(畑正憲)/秦尚義『騎術藻塩草』(一八一六[文化13]年)(木下順二)/洋式競馬のはじまり(早坂昇治)/ある偉大なる職人―高橋勝四郎伝(宇佐見恒雄)/我が馬券哲学(菊池寛)/群衆のなかの孤独(澁澤龍彦)/橙色の帽子を追って―第四十一回日本ダービー観戦記(古井由吉)/最新韓国競馬紀行(古山高麗雄)/アポッスル(山口瞳)/競馬場にて(鮎川信夫)
松岡裕太『魅惑のボイスに腰くだけ』ガッシュ文庫・2009年
《事故にあったときに励ましてくれていた「命の恩人」の声は、ゲームの主人公と同じ声! その声を頼りに、単なる高校生の俺・綾瀬颯が、人気声優・菅野天馬のもとにたどり着くけど、恩人だと思ってた彼は、実はキチク…!? エッチな乙女ゲーの台本読みの相手をしろなんて言って、うまく出来ない俺に実践でエロいことしてくる! しかもその様子を録音され、それをタテに言うこと聞けだなんて、そんなイイ声で言われたら、何でも言うこと聞いちゃうんですケド――!》
石山修武編著・毛綱毅曠著『異形建築巡礼』国書刊行会・2016年
《セルフビルドの可能性を拡張する世界的建築家・石山修武。その生涯を前衛として駆け抜けた博覧強記の建築家・毛綱毅曠(モン太)。二人の鬼才が日本全国を巡り論じ尽くした伝説的連載(「異形の建築」)を、40年の時を越え、初単行本化。均質化した世界に〈異形〉の一石を投じる快著!関西の三奇人建築家(安藤忠雄・毛綱毅曠・渡辺豊和)と六角鬼丈を論じた石山修武による書き下ろし「異形の建築群(または建築の異形群)」を併載。》
ジョージ・オーウェル『動物農場』角川文庫・1972年
《人間たちにいいようにされている農場の動物たちが反乱を起こした。老豚をりーダーにした動物たちは、人間を追放し、「すべての動物が平等な」理想社会を建設する。しかし、指導者となった豚たちは権力を欲しいままにし、動物たちは前よりもひどい生活に苦しむことになる……。ロシア革命を風刺し、社会主義的ファシズムを痛撃する二十世紀のイソップ物語。》
収録作品=動物農場/象を射つ/絞首刑/貧しいものの最期
石川淳『蛇の歌』集英社・1988年
《事業家向井をつけ狙う大太郎と、向井の美貌の妻・七重に恋する小次郎兄弟。都会の夜に展開する虚々実々の駆け引き。崩壊の予感を秘めた現代の混乱から、未来をめざす絢爛たる小説空間。絶筆。》
石川淳『六道遊行』集英社・1983年
《千二百年の時空を往来!不思議な霊力をもつ盗賊が、奈良時代、そして現代で権力の亡者たちに闘いを挑む。SF的想像力を駆使して反俗精神と、「まことの恋」を謳いあげる。(解説・石和 鷹)》(集英社文庫版内容紹介)
アン・レッキー『叛逆航路』創元SF文庫・2015年(ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、アーサー・C・クラーク賞、英国SF協会賞、英国幻想文学大賞、キッチーズ賞)
《ブレクは宇宙戦艦のAIであり、その人格を4000人の肉体に転写して共有する生体兵器“属躰”を操る存在だった。だが最後の任務で裏切りに遭い、艦も大切な人も失ってしまう。ただひとりの属躰となって生き延びたブレクは復讐を誓う…。デビュー長編にしてヒューゴー賞、ネビュラ賞など『ニューロマンサー』を超える英米7冠制覇、本格宇宙SFのニュー・スタンダード登場! 》
コニー・ウィリス『空襲警報』ハヤカワ文庫・2014年(ヒューゴー賞、ネビュラ賞)
《オックスフォード大学史学部の大学院生は、時間遡行技術を使って研究する時代に赴き、各々観察実習を行っていた。第二次大戦の大空襲下のセントポール大聖堂で、火災監視をすることになったぼくは……史学部シリーズ開幕篇の表題作を、新訳で収録。短篇集初収録作「ナイルに死す」、終末SFの傑作「最後のウィネベーゴ」ほか、ウィリスのシリアス系短篇から、ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞作のみ全5篇を収録した傑作選。》
収録作品=クリアリー家からの手紙/空襲警報/マーブル・アーチの風/ナイルに死す/最後のウィネベーゴ
獅子文六『コーヒーと恋愛』ちくま文庫・2013年
《まだテレビが新しかった頃、お茶の間の人気女優 坂井モエ子43歳はコーヒーを淹れさせればピカイチ。そのコーヒーが縁で演劇に情熱を注ぐベンちゃんと仲睦まじい生活が続くはずが、突然“生活革命”を宣言し若い女優の元へ去ってしまう。悲嘆に暮れるモエ子はコーヒー愛好家の友人に相談……ドタバタ劇が始まる。人間味溢れる人々が織りなす軽妙な恋愛ユーモア小説。
解説 曽我部恵一》
横田順彌『人外魔境の秘密』新潮文庫・1991年
《南米のジャングル奥深くで発見された謎の台地。そこは、今なお太古の恐龍が跋扈する人外魔境だった! その調査を依頼されたバンカラ集団天狗倶楽部の押川春浪は、吉岡信敬らお馴染みの面々に、探検家の中村直吉などを加えた探検隊を結成し、勇躍日本を旅立った。果たして、恐龍生存の秘密は解明できるのか? そして、一行を執拗に妨害するドイツの間諜の目的は? 書下ろし長編。》
トーマス・メディクス『ハプスブルク 記憶と場所―都市観相学の試み』平凡社・2005年
《消滅した帝国の五つの街(ウィーン、プラハ、ブダペスト、トリエステ、ヴェネツィア)をめぐる幻想の都市論。文学や思想が土地と結びついた仕方で語られる、精神風景の旅行案内。》
小川さやか『「その日暮らし」の人類学―もう一つの資本主義経済』光文社新書・2016年
《わたしたちはしばしば、「働かない」ことに強くあこがれながらも、計画的にムダをなくし、成果を追い求め、今を犠牲にしてひたすらゴールを目指す。しかし世界に目を向ければ、そうした成果主義、資本主義とは異なる価値観で、人びとが豊かに生きている社会や経済がたくさんあることに気づく。「貧しさ」がないアマゾンの先住民、気軽に仕事を転々とするアフリカ都市民、海賊行為が切り開く新しい経済・社会……。本書では「その日暮らし、Living for Today」を人類学的に追究し、働き方、人とのつながり、時間の価値をふくめたわたしたちの生き方、経済、社会のしくみを問い直す。》
ベルナール・スティグレール『偶有からの哲学―技術と記憶と意識の話』新評論・2009年
《いまや文化産業、情報産業は、人間の「意識の時間」を開発=搾取の対象とする。また、種の記憶たる遺伝子に対する操作も考え合わせれば、現代ではあらゆる意味での記憶が、各種産業にとっては原材料となり得るのだ。この状況において、哲学は、科学は、産業は、そして私たち個々の生活者は何を考えるべきか…。精緻な理論的考察と大胆な文明批評、そしてそれらを支える強靱な「知への欲望」と幅広い関心―、今世界で最も注目される哲学者の一人スティグレールがフランス公共ラジオ教養番組の中で哲学=技術の問題を縦横に語る。》(「BOOK」データベースより)
ザッヘル=マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』河出文庫・1983年
《カルパチアの保養地で毛皮の似あう美しき貴婦人に出会った青年は、残酷なヴィーナスに足げにされ鞭打たれる喜びを発見する。ふたりはフィレンツェに旅し、青年は婦人の奴隷になる契約を結ぶが、彼女に接近するギリシア人の出現に新たな苦悩の快楽を体験する――マゾヒズムの性愛をファンタジックな世界に昇華させ、同時代の知識人に衝撃を与えた、サドと並び称されるマゾッホの代表作。》
小松左京『地には平和を』角川文庫・1980年
《その年の10月にはいると、ソ連軍は敦賀に、アメリカ軍は四日市に大上陸作戦を展開した。あの戦争で無条件降伏したはずの日本が本土決戦をしているのだ。18歳までの男子で本土防衛特別隊が組織されたがほとんど全滅、いまや、山奥の百姓までもが敵に通じている。俺は敵弾をあび、頻死の重傷だ。その時、Tマンと名のる男が現われ、――あと5時間でこの世界は消滅する。歴史を正しい方向にもどさなければ、とわけのわからないことをいい、俺をどうしてもこの世界から救いだしたいともいう。
あの世界で狂ってしまった優秀な男が、5000年の時空を超えて日本の歴史の変革を謀る、著者初期作品の傑作!》
収録作品=地には平和を/日本売ります/ある生き物の記録
小松左京『果しなき流れの果に』角川文庫・1974年
《――巨大な剣竜や爬虫類がいた六千万年も前の中世代の岩層から、奇妙な砂時計が発見された。その砂は、いくらおちてもへらず、いくらうけてもふえない、上から下へ間断なく砂がこぼれおちていた。常識では考えられない超科学的現象! 四次元の不思議な世界を造りだしていたのだ。
さらに不可解な事件が起きた。この出土品の発見場所・K市の古墳へ出向いた関係者が、つぎつぎに行方不明、変死を遂げてしまったのだ……。
迫力にみちたサスペンス、著者のSF長編小説の最高傑作。》
フレデリック・フォーサイス『悪魔の選択(上)』角川文庫・1982年
《西側はソ連の国内危機につながる重大な情報を入手した。この年、ソ連の穀物生産高が激減するというのだ――
その頃、フィンランド製高性能ライフルがひそかにソ連に持ちこまれ、ウクライナ解放運動組織に渡っていた。
西側はソ連の食糧危機をSALTⅣ締結の好機と見た。食糧輸出の見返りに、大幅な軍縮を迫るのである。
食糧と軍縮をかけての米ソ会談が開始された頃、日本の知多で史上最大の巨船、100万トン・タンカーが、前途の危険も知らず処女航海の途についた。
米ソの会談が終幕に向かいかけた頃、クレムリンに極秘の連絡がはいった。KGB議長の暗殺である。これはやがて起る大事件の前触れだった。世界は破局への逆転を開始したのである――》
フレデリック・フォーサイス『悪魔の選択(下)』角川文庫・1982年
《100万トン・タンカー“フレイア”号はテロリストの制圧下にはいり、オランダのマース河口沖合に停止した。
犯人たちの要求は、現在西ベルリンに拘留中の、KGB議長暗殺犯の釈放だった――もし要求が入れられない場合、タンカーは爆破され、原油は北海に流出する。その時、海は死ぬのだ…
この乗っ取りは米ソの友好関係を一変させた。暗殺事件の公表を恐れるソ連は、犯人を釈放すればSALTⅣを破棄すると通告したのだ! そうなれば、食糧危機打開のための強硬な侵攻策が息を吹き返すかもしれない…
タンカー爆破か、米ソ対決か? 世界はいま、恐るべき“悪魔の選択”を迫られていた!――未曽有の危機を迫真の筆致で描く衝撃のベストセラー!》
小松左京『日本沈没(上)』文春文庫・1978年(日本推理作家協会賞)
《小笠原北方海上に浮かぶ小島が一夜にして姿を消してしまった。原因究明のために深海艇「わだつみ」で日本海溝に潜った田所博士たちは、海底に異変がおこっているのを発見する。つづいて伊豆半島では天城山が大噴火。日本列島はついに狂いはじめたのか――地球物理学上の確実な根拠にうらづけられた大パニック小説。》
小松左京『日本沈没(下)』文春文庫・1978年(日本推理作家協会賞)
《富士火山帯は激しく活動を始め、東京は第二次関東大震災で破壊された。地球物理学の権威・田所博士は日本列島沈没の危機が迫っていることを警告し、政府は日本人の海外大移住と資産の退避をはかるため“D-2計画”をひそかに練りはじめた。日本は本当に滅び日本人はユダヤ民族の運命をたどるのだろうか。 解説・山崎正和》
城山三郎『盲人重役』角川文庫・1980年
《是が非でも、牽引力の強いあのC12機関車がほしい! 半島鉄道の田舎重役・屋代は必死だった。なにかと小会社の邪魔をする鉄道振興会の圧力をはね飛ばすために、非常手段のハンストも辞さない構えだ。なにしろ、大正時代に造られた、オンボロ機関車では、沿線の人ロ増の輸送に追いつけない。客車の窓ガラスはなく、屋根から雨が漏り、客は傘をさして乗っている。その上、馬力がないからたった3両の貨車しかひけず、野菜など生鮮食糧品が駅に山積みのまま腐ってしまう!
妻に愛想をつかされ、失明の悲運にもめげず、猛烈な経営者根性と湧きでるようなアイデア。すさまじい“男の生きざま”を描いた最高傑作。》
城山三郎『重役養成計画』角川文庫・1972年
《大鷲造船の平凡な一社員である大木泰三は、ある日、重役候補生四人の中の一人に選ばれた。派閥に属さず、立身出世とは無関係であった彼に、虚々実々の毎日が始まった。最高幹部養成にやっきとなっている会社は、大物作りに懸命。珍奇な事件が次々と起る。
現代のサラリーマンヘの痛烈な批判を合みながらユーモラスに描く快作。》
ジャック・ラカン/ジャック=アラン・ミレール編『精神分析の四基本概念』岩波書店・2000年
《1964年,ジャック・ラカンはたったひとりでパリ・フロイト派を旗揚げする.この激動の年に行われたセミネールで「無意識」「反復」「転移」「欲動」という基本概念を読み替えたラカンは,以後フロイト理論の革新者としての地位を確かなものとする.熱気あふれるその講義を記録した本書は,精神分析に関心を持つすべての人の最良の導きとなろう.》
マンディアルグ『狼の太陽』白水Uブックス・1989年
《マンディアルグの第2短篇集。アンドレ・ブルトンが《新形式の幻想》と評したごとく、作者の諸特質が最も絢爛たるかたちで発揮され、小説技法の面でもほとんど完璧の域に達している。「考古学者」「小さな戦士」「赤いパン」「女子学生」「弾崖のオペラ」「生首」を収録。》
収録作品=考古学者/小さな戦士/赤いパン/女子学生/断崖のオペラ/生首
半村良『邪神世界』角川文庫・1981年
《不動産会社のセールスマン岩井は、ささやかな夢をたくした一枚の宝くじで、なんと一千万円を当ててしまったのだ。だが、その瞬間から、本人でさえ気づかぬほど少しずつ、彼の周囲が変わりはじめた。誰かが、彼の生き方をあやつっているのか……。
恐るべき霊感を持つ易者、そして神秘な宗数団体とめぐりあううち、次第に別の世界へ足を踏みこみ、そこでくりひろげられる神々たちの壮烈な戦争にまきこまれていった。
壮大なスケールで描くスペイス・オペラの傑作。》
半村良『黄金伝説』角川文庫・1979年
《政財界の黒幕として君臨し、底知れぬ権力と財力で、総理の首さえ簡単にすげかえてしまう怪人物栗栖重人。その彼の大邸宅から或る夜、淡い白光を放つ円盤が飛び立つのが目撃された。円盤と彼の間に、いったいどんな関係があるのだろうか。彼の正体を解く鍵が、ここにあるのだろうか。
一方、粟栖重人の秘密を探る人々が謎の遺物と言われる遮光器土偶と火焔土器を手掛りに辿りついたのは、十和田湖畔の山深くにある、天然のものとは思われぬ大洞窟と、そこに眠る莫大な黄金の山であった。
常に人の心をとらえて離さぬ黄金伝説をテーマに、雄大な構想で描く傑作長編「伝説シリーズ」第一弾。》
阿刀田高『奇妙な昼さがり』講談社・1993年
《男と女の愛情の機微、人生のペーソスとユーモアを、絶妙の筆さばきで描いて読者を魅了する、阿刀田ワールドの最高峰、ショートショートの名品34篇を収録する。》
収録作品=スエードの女/別れの朝/髪/夜の歌/青いグラス/シェーン・カムバック/室内風景/チーズの贈り物/魚座の女/マジック海苔/再会温泉/プレイバック/空飛ぶカーペット/名コンビ/バーボンの歌/ジグソー・パズル/20まで/快適な家/黒と白のブルース/灰色の袋/まっ白い皿/噓をつかない女/奇妙なアルバイト/愛の酒場/海の歌/灯台/カタカタ物語/幸福の神様/光る歯/折れた矢/サロン・バス/くぼみ頭
半村良『亜空間要塞』早川書房・1974年
《なかよしSFファンクラブ四人組を見舞った奇々怪々な事件。失踪中の浄閑寺なる人物が、突如伊豆山中の別荘に出現その謎を解明するべく調査にむかった彼らに、空飛ぶ円盤の怪光線が襲いかかった。一瞬気を失った四人が、ふと目ざめるとそこは見知らぬ浜辺――なんと異次元空間の浜辺に漂着していたのだ。そして連発する、とてつもない奇現象怪現象! 新伝奇ロマンの創始者半村良が、才筆を思うままにふるってコミカルに描く傑作娯楽篇!》
東海林さだお『メンチカツの丸かじり』朝日新聞出版・2015年
《食べ物への好奇心と探求心は健在! すき焼き、廃墟となる 馬を食べる人々 お餅は踊る 昆布のような人なりき 豆腐だけで一食 「まいう」の表現力 ビーフジャーキー立ちはだかる クッキーの苦しみ 昆布茶の訴求力 あっていいのか「出し汁」カフェ 丼物を別居させる ヨーグルトの正義 ポショでやっちゃってください 稲荷ずしに異変 三種合体麺て何? パンにバターというけれど ラッキョウ漬けのカリリ チーズケーキはエバらない ビールを飲むのはむずかしい ラーメンスープの残し方 ……。抱腹絶倒の東海林ワールド、シリーズ第38弾!》
泡坂妻夫『湖底のまつり』角川文庫・1980年
《渓流の中にポツンと顔をのぞかせた平らな岩に座り、紀子は思いっ切り足を伸ばした。秋の峡谷の野性的景観が、のしかかるように迫ってくる。その時、突然、彼女は川が大きくふくらむのを感じた。そして次の瞬間、怒り狂ったような濁流に呑み込まれていた……。
傷心を癒すため旅に出た香島紀子は、旅先の峡谷で増水に遭い、危ういところを土地の若者に助けられた。その夜、彼女は村はずれのあばら家で、男と一夜を共にした。だが翌朝、なぜか男の姿が消えている。不審に思い、探しに出た彼女は、村人から、男が一月前に毒殺されていたと聞いて愕然とした! 本格推理の構成の中で、幻想美を追求した注目のミステリー・ロマン。》
神林長平『七胴落とし』ハヤカワ文庫・1983年
《なんの理由もなく少女がいきなりナイフで自分の手首を切りつけ、自殺をする。これはゲーム――テレパシーによって自殺を無理強いしあうという、子供たちのゲームなのだ。テレパシー能力を持たぬ大人にはわからぬ、子供の世界。そして脇田三日月は、いままさに子供から大人になるうとし、同時にテレパシー能力もまた失おうとしていた。意識の伝達による豊穣なイメージの世界から切り離されようとする三日月は、やがて妖刀“七胴落とし”によってすべてを断ち切られた時、なにを見るのか! 新鋭神林長平が異様な閉塞状況のイメージを描く力作!》
水見稜『マインド・イーター』ハヤカワ文庫・1984年
《重力の束縛を脱し、宇宙に活動の領域を広げ始めた人類は、同時にあまねく宇宙を徘徊する恐怖の存在を知った。彗星として知られる天体の多くは、実は現宇宙への底知れぬ“憎悪”が実体化したものであり、接触した人間の精神を食いちぎり、肉体を結晶の塊に変える怪物、マインド・イーターたった。この脅威に対し人類はハンターと呼ばれるエリートたちを宇宙へ送り、その破壊につとめるが……。前宇宙の記憶をもつマインド・イーターと現宇宙の創造物たる人類。宇宙成立の矛盾に端を発する両者の戦いをとおして、独自の宇宙観を語る新鋭の力作!》
収録作品=野生の夢/おまえのしるし/緑の記憶/憎悪の谷/リトル・ジニー/迷宮
以下はおまけで、文春文庫版で再読した『日本沈没』の親本、カッパ・ノベルス版。
小松左京『日本沈没(上)』カッパ・ノベルス・1973年
《日本列島の下で、何かが起こっている!?……深海潜水艇“わだつみ”の操艇者・小野寺俊夫は小笠原諸島北方の島が、一夜で消えてしまった原因を突きとめようと、海底火山の権威・田所博士と日本海溝に潜り、海底異変を発見した。小野寺が七夕の暗い海岸で、別荘の持主・玲子と抱擁中、伊豆の天城山が大噴火をおこす。日本沈没を警告する田所博士の指示で、政府は“D-1”計画を立て、極秘に調査を開始した。――地球物理学の最新の成果と豊かな国際感覚に裏づけられた、SF界の第一人者・小松左京のライフワーク、千三百枚の書下ろし超大作。》
《稿を起こしてからすでに九年たつ。書き始めてみると、“日本列島を沈める”のは容易なことではなく、呻吟しているうちに月日がたってしまった。この間、地球科学の発展はめざましく、新しい理論の出現に従って、改稿しなければならないところもあった。第二次関東大震災も、現在のようにやかましくいわれるようになるとは予想もしなかった。――当初の構想では、日本民族の流亡記まで及ぶつもりが、すっかり前半で足をとられてしまったので、とりあえず沈没までを一区切りとする。未完の架空譚の“第一部”とお思い願いたい。 「著者のことば」》
《国際人・小松左京の神出鬼没ぶりは有名で、昼まで大阪・箕面の自宅で寝ていたかと思うと、三十分後には、北まわりヨーロッパ便の機上の人となっている。「へたな操縦士より滞空時間は長い」というのは、科学的事実で、この“作家”のイメージをこえた行動力が、未来学の提唱、SF国際シンポジウムの日本開催、万博プロデュースなどを成功させたのだ。》
小松左京『日本沈没(下)』カッパ・ノベルス・1973年
《深海潜水艇の操縦者・小野寺俊夫は、海底火山の権威・田所博士と日本海溝に潜り、海底異変を発見する。各地に頻発する地震や、富士火山帯の活動開始で、日本中が混乱に陥りはじめたが、日本人の国外脱出と資産退避を計る“D―2”計画はひそかに練られていた。洋上におかれたD計画本部で、田所博士が日本列島の沈没を予告しているとき、東京は、第二次関東大震災の直撃をこうむっていた。(上巻のあらすし)――一億日本人の国外大移住は可能か? 果たして日本列島は沈没するのか? いつ起こるかもしれない恐怖を描いた、異色の問題作。》
《国際的にも期待されていた作品
(作家)星 新一
小松左京の好奇心の炎の対象にならぬ現象は、この宇宙に存在しない。彼はエネルギッシュに行動し参加し、あらゆる知識を自己の血肉に変えてゆく。そのため科学と人間性の見事な結合という作風が形成されている。
本書は彼がその個性と九年の時間をつぎ込んで書きあげたもの。国際的にも期待されていた作品である。》
《小松左京は、平均週に一回は、大阪から東京にやってくる。その際、彼は「江戸へ下る」と称し、けっして「上京する」とは言わない。そこには“″関東対関西”の意識以上に、大阪に育ち、京都に学び、古い京都の文化を愛する“文人″の顔がある。彼の作品に、SFでありながら、かならず生きた人間の翳が描かれていることの理由の一つであろう。》
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