『健次はまだか』は角川春樹(1942 - )の句集。詩2篇を含む。中上健次「俳句と言の葉」を付す。
作者は「河」主宰。
晩秋のひかりのなかで死なせてくれ
花あれば父なき家に父のこゑ
試写室の椅子に健次がゐる晩夏
東日本大震災より七か月
まなうらに山河は澄めり天の川
性の闇死の闇深し迢空忌
菊の日や蒔絵の椀に栗の飯
詩の水脈(みお)は荻窪にあり秋のこゑ
健吉・健次・照子・巳之流・澄雄・じゅん
もう一度花の吉野に来て下さい
源義が死んだ。マルボロを吸ふ
軀(み)より湧くもがりの笛を聴きにけり
黒き蝶ゴッホの耳を殺ぎに来る 春樹
黒き蝶監視カメラの中にゐる
逃げ水やライカの中に父のこゑ
健吉・健次・巳之流・澄雄がゐた吉野駅は
あの日には還れぬ花の駅にゐる
昭和の日いまも健次の椅子がある
健次待つサマータイムの駅があり
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