『一夜劇』は中原道夫(1951 - )の第12句集。
作者は「銀化」主宰。句集の後半、パリ同時多発テロ事件の直後にパリ入りしている。
水餅の息継ぐ水を替へむとす
魔羅神の鈴口に銭雪解風
うぐひす餅巣箱のやうな口に入る
十代の春はひえびえ人の中
深山は幽谷招きほととぎす
ひとつだに呉薑(くれのはじかみ)似るはなく
呉薑=生姜の古称
蠅帳の中より匂ふ一夜劇
撞木にも根のある記憶除夜の鐘
お揃ひの姉妹おそろしお年玉
スウェターは悉く穴穴を着る
雪が来る前を綺麗に掃いてある
十一月十五日パリ・シャルル・ド・ゴール空港着
服喪かな全土凍てつく燈を落とし
血を血で洗ふ絨毯の吸へる血は
凍てつのるはずなる自動小銃の指
セーヌ川
滔滔と冬の蛇行を媚態とも
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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