『有翼樹』は打田峨者ん(1950 - )の第3句集。
作者は「句歴28年。無所属」。
ひとつとは落下途中の寒玉子
痣(アザ)にがき春のオレンヂ マラガ下車
メメント・モリの我が暮つ方――
九相図(クサウヅ)を逆に辿りて春の耳
逝く夏やタコの枕が砂こぼす
草に寝て墜つ 秋天の底ふかく
センターの定位置の空 鰯雲
エチュード偽辞世――秋ヴァージョン
栗の虫 銀河の単位は一個二個
ロマの甃道(イシミチ) サクロモンテは磨滅の光(テカ)り
2011.3.11
いちぶんの一の一人(いちにん) 惨天位置位置
「私は何を残しただろう」と歌ひ収める『花は咲く』といふ美しげな
歌が公共放送よりしきりと流れ来る昨今のあきつ島。折に触れて――
未生(ミシヤウ)の君へ私が遺す除染黒袋(ふれこん・ばつぐ)の黒い富士
擬・立憲 見知らぬ秋の深みゆく
9・27(日)十五夜、中秋の名月[陰暦八月十五日]
月の客 戦争というミダス王
人間は戦争も好き 月今宵
灯ともるや海霧(ジリ)の五岐路の理髪店
高層階 老女ひとりの鬼やらひ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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