9月は、眉村卓の新作ショートショート集『短話ガチャンポン』というのが出たので読んだほかは、古い娯楽小説ばかり。硬めの本はほとんど読めていない。
この書影コーナー、古い本の装幀萌えで始めたものなので、それでいいといえばいいのだが。
眉村卓『短話ガチャンポン』双葉文庫・2015年
《五二歳の杉田は、意識だけが中学時代に戻るという体験を繰り返すようになった。その真相とは?(「杉田圭一」)一九歳の坂本明の前に現れた、奇妙な顔。代償を払えば死ぬときの状況を選ぶ権利を与えてくれるというのだが(「臨終の状況」)。アルファベットのAからはじまりZまで、思いつくままに綴られた26編の全編書き下ろしショートショート。現実と仮想を仕切る回転ドアを行き来してみませんか?》
収録作品=杉田圭一/大阪T病院/パラパラ/勧誘員/超老/思い出し笑い/易者/殺意/〈人間だけ〉ゴーグル/エンテンポラール/黄色い猫/T/転倒/シティ・ビューで/離陸/昔のコース/スクルージ現象/未練/上級市民/ウジデンビル/幻の背負投げ/生田川家/ウワァァァァァァア/窓の豪雨/臨終の状況/島真一
芹沢一也・高桑和巳編『フーコーの後で―統治性・セキュリティ・闘争』慶應義塾大学出版会・2007年
《コレージュ・ド・フランス講義録を媒介に、1970年代後半のフーコーの問題系にフォーカス。気鋭の論客たちがフーコーを読み、使いまわし、今日の社会・世界に向かう新たな視座を提示する。》(「BOOK」データベースより)
荒巻義雄『柔らかい時計―定本荒巻義雄メタSF全集 第1巻』彩流社・2015年
《ダリのシュールレアリスム思想をSFという“文字”で描き出し、独自の作風を打ち立てた表題作はじめ、精神医学的テーマをあつかった初期傑作作品を収録。作者が初めて商業誌に掲載されすべての出発点となったハードなSF論「術の小説論―私のハイライン論」も併録。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=柔らかい時計/白壁の文字は夕陽に映える/緑の太陽/大いなる正午/柔らかい時計/トロピカル/大いなる失墜/しみ/術の小説論
佐野洋『空翔ける娼婦』文春文庫・1980年
《スチュアデスが売春を働いているという噂を聞きこんだ佐野洋氏は好奇心に駆られ、北海道に飛んだ。機内の観察をもとに、真相を推理するうち、コトはなんと殺人事件に発展した。果して佐野探偵の謎解きは成功するか? つねに趣向を凝らす作者が自ら実名で登場する、表題作ほか五篇を収めた風変りな推理連作集。解説・吉村達二》
収録作品=にがい酒/推理旅行/空翔ける娼婦/亡霊の電話/忍び泣く火/仁の罠
陳舜臣『弓の部屋』講談社文庫・1981年
《夏の夜の神戸を彩る生田神社の花火。それを異人館のボウ・ルーム(弓の部屋)から眺める男女の間で突如殺人が。被害者はメード光子の夫の山中。彼は電灯を消した一瞬にすリ替えられたコップを口にして、毒殺された。捜査の進展につれ、居合わせた人々の過去が次々にあばかれて……。神戸情緒あふれる本格ミステリ。》
海渡英祐『伯林―一八八八年』講談社文庫・1975年(江戸川乱歩賞)
《厳しい寒気に閉ざされた明治21年冬のベルリン。折から留学中の若き医学徒森林太郎はドイツ娘との恋に悩み煩悶の日々を送っているが、古城の一室でおきた伯爵殺害事件に遭遇、鋭い推理で究明にのりだす。現場は完全な二重の密室。事件の背後に鉄血宰相ビスマルクが巨大な影を落し、殺人の謎は複雑さをますが……》
柴田錬三郎『赤い影法師』新潮文庫・1963年
《寛永の御前試合の勝者に片端から勝負を挑み、風のように来て風のように去る不敵、非情の忍者“影”。拝領の太刀に秘められた謎をめぐり、柳生宗矩、真田幸村、伊賀の頭領服部半蔵がまんじ巴となった一大闘争の中で、皮肉な出生の秘密を背負う“影”は忍者として悩むのだった。時代小説に一転機をもたらし、“眠狂四郎シリーズ”とともに著者の代表作とされる評判の長編小説。》
水上勉『土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―』新潮文庫・1982年
《著者は少年の頃、京都の禅寺で精進料理のつくり方を教えられた。畑で育てた季節の野菜を材料にして心のこもった惣菜をつくる――本書は、そうした昔の体験をもとに、著者自らが包丁を待ち、一年にわたって様様な料理を工夫してみせた、貴重なクッキング・ブックである。と同時に、香ばしい土の匂いを忘れてしまった日本人の食生活の荒廃を悲しむ、異色の味覚エッセーでもある――。》
開高健『フィッシュ・オン』新潮文庫・1974年
《無垢の大地、清澄な空気、凛冽の水――アラスカの荒野の川での豪壮なキング・サーモンとの闘いを手始めに、世界各地の海と川と湖に糸を垂れた釣師・開高健の世界釣り歩き。その絶妙の語り口は、魚を語り、道具や技術を追究し、酒、料理、女に話が及んでも、おのずと魚釣りの話に収束しそのまま現代文明への鋭い批評ともなる。ユニークな文体と精緻な観察眼で綴られた名エッセイ。》
田中光二『大海神―怒りの大洋第二部』角川文庫・1984年
《物凄い衝撃が勇魚を襲った。船の左前の海面に巨大な三角の帆が現われたのだ。幅広の円月刀にも似たその姿は、サメの背鰭に紛れもない。だが、その大きさは想像を絶していた。潜水艦の司令塔に匹敵する巨大な背鰭が、悠々と水平線に向かって行くのが見えた。
海洋開発庁の調査士沖勇魚は、海洋牧場推進・開発計画プロジェクトチームに参画していた。サンマやサバなどの放牧養殖計画には、訓練されたイルカの群れを使うことが絶対必要だった。しかし、その大切なイルカを襲う巨大鮫が突然出現したのだ!
雄大な海を背景に、人と巨大鮫の熾烈な戦いを描く痛快海洋冒険小説。》
田中光二『大漂流―怒りの大洋第三部』角川文庫・1984年
《21世紀初頭、イスラエルは建国以来の危機を迎えていた。いったんは雪どけの方向に向かったアラブ世界との対立が再び激化し、中東は一触即発の臨戦体制に入ったのだ。この状態を憂えた海外のユダヤ系財閥グループは、民族の存続のために、巨大な海上都市を建設することとした――。“ネオ・エクソダス計画”により実現した二つの人工島は、現在ではそれぞれ五万人の人間を抱え、ゆっくりと太平洋上を漂流している。それは、すべてのエネルギー資源を太陽と海から自給し、自然の脅威や事故への対応も万全な、奇蹟的な洋上居住システムである。
この海上都市の一つ“ポセイドニア”が、テロリスト集団“パレスチナの息子たち”に狙われている! UWRT (水中救助隊)の若きリーダー沖洋人とそのチームは“ポセイドニア”破壊計画を阻止すべく行動を開始した……SFとミステリーの要素を盛り込み、熱い読後感をもたらしてくれる海洋冒険小説の傑作!》
田中光二『幻覚の地平線』角川文庫・1976年
《「“第三の目”に気をつけろ!」
男に会った瞬間、ロスの耳にあの言葉が鮮やかに蘇った。顔中に伸びた髯と額に泥絵具で描いた無気味な目、彼こそ全ての謎を握る問題の人物だった!
幻覚剤常習者が集まって造った共和国、幻覚境。アメリカ社会の中核をなす多くの文化人がそこへ流入し、対策に悩む政府は情報員を潜入させた。その名はロス、幻覚境に顔のきく交易屋だ。だが、首尾よく潜り込んだ直後、彼は無頼のヘロイン狂いの兇弾に襲われて……。
俊英田中光二がサスペンス豊かに描く冒険SFの傑作。ほかに一篇を収録。》
収録作品=幻覚の地平線/閉ざされた水平線
荒巻義雄『未来拳銃“南部改”』角川文庫・1985年
《西暦20XX年、東京――。
中近東での第三次世界大戦後、不況により極度に国家財政が悪化した。諸都市は自らの手で治安を維持しなければならなかった。
三年前、特殊部隊員として砂漠で戦っていた陣内武尊は、都市公安委員会の発注する射殺命令を落札、請負う会社を経営していた。通称“ポリス・マフィア”である。
ある日、営業の烏森は経営困窮の理由から秘密入札により、巨大な標的を待ち込んだ。しかし、武尊は即座に危険を感じ、依頼人に前金を返そうとしたのだが……。
無法の街に超特殊拳銃“南部改”が炸裂する、SFスーパーアクション!》
豊田有恒『カンガルー作戦』徳間文庫・1981年
《秋野恵介一行はオーストラリアでボーキサイト鉱脈の探査中、擱座したUFOに出会い、乗員を救出した。彼は23世紀から来たタイム・パトロールで、この時点あたりに出没する未知のUFOを調査中、突然攻撃を受けたのだという。そのとき空中にあらわれた青く輝くUFOから異形の人影が……。
遠く始新世の彼方から23世紀の未来まで、時の暁闇を截り裂いて展開する白熱の時空間チェイス! 好評のエベレット・シリーズ。》
J・M・バリ『ピーター・パン』講談社文庫・1984年
《星のきれいな夜、妖精の粉をふりかけ星られて、ウェンディと二人の弟は、ピーターを先頭に窓から飛びだしました。行く先は、夢と冒険の島ネバーランドです。そこには、ご存知海賊フックが待ちうけています……。だれでも愛さずにはいられない、永遠に大人にならない少年ピーター・バンを描いたイギリスの名作童話。》
田中光二『アッシュと燃える惑星』講談社文庫・1983年
《愛が全宇宙の至上の価値であることを見極めるべく旅を続けるシャルミラ星の美女ルーラ、彼女を護る若き不死身の戦士アッシュと放浪の老詩人ルカン。三人の行く手を阻む悪の化身・殺戮傭兵団隊長ベン・ユスフ――そこに、知恵と体力の限りを尽した死闘が展開される。果して“愛”が勝てるのだろうか。壮大なスペース・オペラの傑作第2弾登場!》
草野唯雄『ハラハラ刑事危機一髪』カッパ・ノベルス・1987年
《今回はプロット抜きのブッツケ本番の取材行だったので、どうなることかと思っていたが、知床五湖観光中にクマに着想。そこからプロットが拡がった。
といっても暴力団がらみの会社犯罪と、それに巻きこまれる若いアベックという基礎的データはきまっていたので、あとはその味つけだ。そこで、突然浮上したのが、例の「ハラハラ刑事」の両人であった。
このシリーズは三作で中断していたが、復活を望むファンの声に応えて再登場。温かく迎えていただければ幸いだが……。 「著者のことば」》
《磯貝三千代と足立孝司がデートの最中、突然現われた逃走中の銀行強盗・関口。関口は強奪した八千万円の半分をやるから半分を母親へ、といって死んでしまう。さっそく二人は、関口の母親のいる網走へ……。一方、坂下署の最低コンビ・柴田刑事と高見刑事も、関口の背後関係をあらうために網走へ出張。彼らは珍しくスイスイ捜査を進め、三千代と孝司を捕まえる。ところが三千代と孝司は知床五湖の殺人事件にまきこまれ、影の組織に狙われていた! 柴田と高見まで絶体絶命の大ピンチ!?
ドキドキ、クスクス――北海道を引っかきまわす“ハラハラ刑事”二人組の迷推理と珍無類の活躍! 痛快ユーモア・ミステリーの書下ろし決定版!!》
《意表をつくストーリー展開で読者を魅了し続けてきた草野唯雄だが、その活躍のジャンルは幅広い。本格推理、サスペンス・ミステリー、スリラー……そしてユーモア・ミステリーの代表作がこの「ハラハラ刑事」シリーズである。
この作品も、広大な北海道を舞台に、たしかな謎ときの醍醐味、愉快な主人公のキャラクター、そしてテンポの速いストーリー展開で、十二分に読者を楽しませる快作である。》
光文社文庫版
アーサー・C・クラーク『前哨』ハヤカワ文庫・1985年
《死と静寂が支配する凄涼たる月面に、それはひっそりと佇んでいた。人間の背丈の二倍ほどのピラミッド、それは幾千億の年月を、ただひとつの目的を抱いて待ちうけていたのだ――地球に知的生物が発生したことを、遙かな宇宙の高みにいる何者かに教えるため……名作『2001年宇宙の旅』の原型となった記念碑的標題作ほか、宇宙服を着ただけのスパイが、敵宇宙戦艦からいかに逃げおおせたか、その機略縦横の活躍を描く「かくれんぼ」、限石に直撃された宇宙船内で展開されるスリリングな心理ドラマ「破断の限界」など、巨匠が透徹した視線であざやかに描きだした、11篇の未来!》
収録作品=第二の夜明け/おお地球よ……/破断の限界/歴史のひとこま/優越性/永劫のさすらい/かくれんぼ/地球への遠征/抜け穴/遺伝/前哨
アーサー・C・クラーク『明日にとどく』ハヤカワ文庫・1986年
《太陽はあと七時間でノヴァと化し、その星系の壊滅は避けられぬ運命だった。だが、一隻の銀河系巡視宇宙船が、その第三惑星をめざし全速力で航行していた。わずか数日前、そこに知的生命体の種族が棲息していることが判明したのだ! 人類を救出すべく地球にやってきた異星人たちの活躍をスリリングに描きだす、巨匠クラークの代表作「太陽系最後の日」、五百万年前に滅亡した古代文明の謎を解明しようと、木星の衛星に遠征した調査隊の驚くべき発見とは……「木星第五衛星」、地球人と異星人のファースト・コンタクトをユーモラスに描く「親善使節」など、傑作12篇を収録。》
収録作品=太陽系最後の日/闇を行く/忘れられていた敵/エラー/寄生虫/地中の火/目覚め/親善使節/呪い/時の矢/木星第五衛星/憑かれたもの
矢野徹『テレパス狩りの惑星―連邦宇宙軍シリーズ5』ハヤカワ文庫・1992年
《宇宙間臓器売買事件の手掛りを追って、惑星テラ2へ潜入した連邦宇宙軍。しかし、その帰途、テラ2が突然の消失をとげ、かわりにもう一つの惑星が、同じ宙域に現われた。臓器売買団とテラ2消失の関係は? その謎をとく鍵はこの惑星にあると、ムナカタ中尉とアンドロイド・ムラサキの二人はふたたび潜入を試みるが……その惑星は、犯罪シンジケートが超能力者を弾圧する恐怖の世界だったのだ! 快調SFシリーズ第5弾》
矢野徹『草原をゆく帆船―連邦宇宙軍シリーズ6』ハヤカワ文庫・1993年
《GS二重惑星王国の王女が暗殺された。遺体につきそって、王女の母星グラス・ワールドを訪れたムナカタ大尉が見たものは、惑星全土に広がる大草原とそこを悠然と走る車輪付き巨大帆船だった――
だが、その地で何者かがムナカタたちを襲う。王女暗殺は宮廷内部の犯行なのか? 犯人を追って、二重惑星のもう一方の星へ飛んだ連邦宇宙軍。だがそこで彼らを迎えたのは、仇敵エリミネーターだった! 快調SFシリーズ第6弾》
和久峻三『盗みは愉し―赤かぶ検事奮戦記8』角川文庫・1981年
《相変わらず、赤かぶ検事ば“コケ盆景”づくりに忙しい。法廷では、空き巣専門のコソ泥事件を扱っていた。
被告人の50がらみの男は、まるで盗むことを生き甲斐にしているように手あたりしだい窃盗をはたらいていた。決して、金めのものだけを狙うということではないのだ。
一方、赤かぶ検事のかみさんは、近所に越してきた家の5匹のシェパード犬の猛烈な吠え声に、眉をつりあげて怒っていた。警察にも、沢山苦情が舞い込んでいるという。が、ある目、何者かによってこの犬が変死したのだ。
まったく無関係にみえる事件は、思わぬところで交叉していた……。
ごぞんじ“赤かぶ検事”シリーズ。好評第8冊目!》
収録作品=土蔵の中に棲む女/盗みは愉し/魔弓/九官鳥は偽証する
和久峻三『二度死ぬ奴は、三度死ぬ―赤かぶ検事奮戦記9』角川文庫・1983年
《除夜の鐘を聞きながら、大晦日の夜をのんびり当直していた榊田警部補のところへ、中年男がとびこんできた。平湯峠付近の国道てへ男の乗っていた車に、何かが落ちてきたというのだ。渋々ながら、榊田は署員を連れて寒い現場に向かったが、めぼしいものは何もなかった。
ところが、約1時間半後、同じ場所で、地元の大地主の轢断死体が発見されたのだ――解剖の結果、死後轢断であることが判明し、事件は思わぬ方向へ進んだ……。
民法改正により遺産相続に莫大な差が出てしまう、時間トリックを扱う表題作ほか、墓石の下から女の泣き声が聞こえる奇怪なミステリー、榊田が罪に問われてしまう事件等、ごぞんじ“赤かぶ検事”が大活躍する好シリーズ!》
収録作品=二度死ぬ奴は、三度死ぬ/殺して、なぜ悪い/盗人神様/墓石が哭く
小峰元『アルキメデスは手を汚さない』講談社文庫・1974年(江戸川乱歩賞)
《少女が死んだ。アルキメデスという不少可解なことばを残して……。妊娠していたともいう。さて、父親は? 少年が教室で倒れた。毒殺未遂だという。ミステリアスな事件に巻き込まれた学園を舞台に、反体制的で向うみず、それでいてけっこう友誼に厚い高校生群像を小気味よく描く爽快な乱歩賞青春推理。》
清水義範『神界の異端者―エスパー・コネクション1』ソノラマ文庫・1981年
《高校卒業を待ちかねたように、五十嵐信介は故郷の街・小野田を捨てて東京へ出た。妹を事故で失い、平凡な時計職人だった父親も死んだ今、故郷に残されているのは暗く重い記憶だけである。信介はそれから逃れたかった。それに、死んだ父が残した言葉の影響もあった。父は“東京に出て、伊勢浜泰造にあえ。おまえの知りたがっていることを教えてくれるだろう”と信介の見も知らぬ男の名を告げたのだ。父は気づいていたのだろうか。信介に時折生じる奇妙な力について、何かを知っていたのだろうか。信介にとって東京への旅立ちは闇への旅立ちとなった。自分の持つ力と伊勢浜泰造の正体を知った時、前途にあるのは凄惨な闘いのみだったからだ。――新シリーズ《エスパー・コネクション》第1弾!》
西村寿行『癌病船』講談社ノベルス・1983年
《アメリカの大富豪リチャード・スコットが全財産を世界保健機構(WHO)に寄付し、記念財団が発足して、難病と闘う癌病船“北斗号”が建造された。船長は日本人の白鳥鉄善、病院長は小児癌の権威ゲリー・ハリソンである。出航直後から元某国元首ハッサン・マラディの乗船をめぐって、白鳥とハリソンの深刻な対立を呼んだ……。》
《著者のことば
癌は憎むべき人類の敵だ。癌だけではない。どうにもならない難病がある。それらの難敵に敢然と立ち向かう巨船、癌病船を描いてみたかった。人類の、科学の叡智を総結集した癌病船だ。癌、難病への戦端開始を宣言して癌病船は地球周回に向けて初航海のドラを叩く。いたるところで難題が山積している。人類の危機がある。癌病船自体の危機が迫る。だが、癌病船は全速力でその危機に突入する。》
村松友視『風の街夢あるき』徳間文庫・1987年
《何でもないシチュエーションの中に立っているだけで、どこか役者気分になれるのも、旅のそそのかしのひとつだ。そして、このそそのかしに来るのが、旅をしている私にとっては最高の気分といえるのだ。そんなわけで、この本は旅の本でもあり、街に関するエッセイでもあるが、私の役者気分による夢日記とも言えるだろう(「あとがき」より)。銀座の路地裏からメキシコシティまで、直本賞作家が贈る旅の極意。》
山田正紀『電脳少女―アイドロイド・ユイ』光風社出版・1993年
《極度に発達した“メディア”が支配し、現実と疑似現実が錯綜する近未来都市・東京では、麻薬テクに溺れ、罪悪感をなくした若者たちが犯罪を繰り返していた……電脳少女・ユイは、超人的パワーとアイドル並みのルックスで、麻薬テク組織の壊滅へと乗り出すが、彼女の行手には次々と強敵が出現して……
鬼才が贈る近未来アクション長編!!》
栗本慎一郎・笠井潔『闇の都市、血と交換―経済人類学講義』朝日出版社・1985年
橋本治『とうに涅槃をすぎて』徳間文庫・1984年
《日本製のガムとアメリカ製のガムを食べ比べていた少年橋本治は「過剰にファッショナブルであるが為にベーシックなものが欠けている前衛の不安を覚え」て育った。
そして途方もなく暗かった東大時代――本書は涅槃男優とは全く関係ありませんが、ここに開陳するのは、イラスト、編み物そして小説と八面六臂で活躍する偉才のラディカルな自分史。読むうちに見えてくる最上階からの「時代」の眺めは……!?》
杉本苑子『江戸を生きる』中公文庫・1979年
《将軍が登場する、大名や御家人や農民、絵師に講釈師、役者や尼や町女房まで、泰平の世の桎梏の中に生きた多彩な人物のしたたかな生きざまを活写する。人間味あふれる江戸時代人物誌》
高千穂遙『ダイロンの聖少女―クラッシャージョウ10』ソノラマ文庫・2005年
《ゴーフリー帝国の独裁者ルキアノスに抵抗を続ける唯一の存在は、聖少女ネネトの力で守られた城塞都市ダイロンだった。しかし度重なる攻撃で都市の結界に綻びが生じ、ネネトは頭部に致命的な傷を負う。治療のためダイロンを離れねばならないネネトの護衛を依頼されたのは、ジョウのチームだった。ネネト捕獲の絶好のチャンス。皇帝ルキアノスは、刺客として、最強のサイボーグ戦士を派遣した。その名はザックス。》
種村季弘『吸血鬼幻想』河出文庫・1983年
《ドラキュラ伯爵としておなじみの吸血鬼の発生は、人類の出現とともに古く、その分布は広範にわたっている。本書は吸血鬼伝説を広く渉猟して歴史的系譜をたどりながら、文学、芸術、哲学、精神分析学、映画などのさまざまなジャンルにその影を追い求め、魂の陰画としての吸血鬼幻想、戦慄すべき血のエロチシズムの世界を縦横に考察した、吸血鬼研究の先駆的作品である。》
平井和正『死霊狩り』ハヤカワ文庫・1972年
《レース中の事故から奇跡的生還を果たした田村俊夫は、再起に必要な金のため、カリブ海の孤島で、秘密機関による「訓練」に身を投じていた。失敗が死を意味するその訓練は、地球外生命体に憑依された“ゾンビー”たちと戦う者を選別するための冷酷な生存テストであった。過酷な試練を潜り抜けた者たちを襲う、さらなる事態!人類の存亡を賭けた死闘を通じて人間の心の闇に鋭く迫る、SFアクションの最高峰。》(「BOOK」データベースより)
眉村卓『照りかげりの風景』廣済堂・1981年
瀬木慎一『日本美術の流出』駸々堂出版・1985年
好村冨士彦『真昼の決闘―花田清輝・吉本隆明論争』晶文社・1986年
《歴戦の批評家・花田清輝vs若き批判者・吉本隆明―1956年から60年にかけて、この2人のあいだで激しい論争が展開された。文学者の戦争責任論に端を発し、政治と芸術運動をめぐってなされたその応酬は、最後には吉本の勝利を強く引象づけるような、花田の撤退とともに終結した。この論争はどんなものだったのか?花田はなぜ負けたのか?吉本は本当に勝ったのか?この伝説的論争の現代的な意味をさぐり、ラストシーンに隠されていた秘密を発見する。》(「BOOK」データベースより)
かんべむさし『ミラクル三年、柿八年』小学館文庫・2010年
《二〇〇五年一月、作家「かんべむさし」は一通のメールを受け取る。AMラジオ早朝ワイド番組のパーソナリティを、月曜から金曜までの毎日担当しないか、という依頼だ。しかも裏番組は二つとも三十年続く大物の人気番組。作家活動との両立は可能なのか、作家的な発想と思考を、朝のワイド番組でどう生かすのか。スタッフだちとの試行錯誤の日々が始まった。そして作家は、活字人間と電波人間の気質の違いを痛感しつつ、刺激に満ちたラジオの仕事に熱中する…。ユーモラスで軽妙な会話と柔軟で緻密な思考が、爽やかな朝の空気の中でざわめく、意欲的書き下ろし長編。》
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作家の眉村卓さん
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