閑中俳句日記（別館） －関悦史－

「円座」2015年8月号

　「円座」（発行：武藤紀子、編集：小川もも子）2015年8月号から。

　関悦史「平成の名句集を読む」第6回は、竹岡一郎句集『ふるさとのはつこひ』について。



いづれの日かばばと呼ばれむ春北風　　　武藤紀子

春北風だんだんうれしくなりにけり


物売りの角曲りてや春深し　　　中田　剛


噴水の止めば子供のみな消えて　　　山中多美子

ゆつくりと動く白雲柿若葉　　　鈴木滋三







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Thomas Dolby - Europa & The Pirate Twins

 

「井泉」第64号（2015年7月）

　歌誌「井泉」（編集発行・竹村紀年子）第64号（2015年7月）から。

　招待作品は暁方ミセイの詩「生態系」。

　リレー小論「今、私が表現したいもの」、今号は山崎聡子、喜多昭夫、さとうますみ。



春分の墓参の友の土産なる〈土佐日記〉とふ高知の銘菓　　　松野登喜子


ごぉーという音に扉の開きたり体感室の床の揺れをり　　　森　陽子


その名さえおぼろとなりて大福は苺に限ると言ひし人はや　　　喜多昭夫






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The Police - Every Breath You Take

 

「未定」第99号（2015年7月）

　第2次「未定」（編集発行：未定編集部＝高原耕治）第99号（2015年7月）から。

　特集は「多行形式の磁場」。

　特別評論として、川名大「筑紫磐井の執筆モラルを糺す―嘘で固めた誹謗と論理のすり替え―」を掲載。「豈」57号の「発行人よりお詫び」への反論。



冷えゆく脳髄
天心に
独楽
唸りゐて　　　　　　高原耕司

　　　＊

堅し密室
おお　非在の王よ
柱の
飛翔術を印可せよ　　　　　　高原耕司

　　　＊

肋膜や
息吸ひこめば
錐が降る　　　　　　玉川　満

　　　＊

木に登る子猫

此処より
海恐ろし　　　　　　山口可久實






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Genesis - I can't dance (1991)

 

「ジャム・セッション」第7号（2015年6月）

　「ジャム・セッション」（編集発行・江里昭彦）第7号（2015年6月）から。

　江里昭彦と、中川智正死刑囚2人の同人誌。

　中川智正「私をとりまく世界について（その5）」、江里昭彦エッセイ「声に、会いにゆく（前）」「一句鑑賞・小宮山遠句集『林棲記』より（前）」掲載。

　第7号のゲストは山口剛。



戦前の景色山頭火がぼやける　　　山口　剛


　　岡山の商店街
母は銀ビル祖母は富士やの秋刀魚買う　　　中川智正

ワイパーのようなつま先　落葉降る


ふり返り交番すでに灯りたり　　　江里昭彦

夢路にて父おごそかに鹿殺す






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Suntory Royal CM 1984 / Antonio Gaudí

 

「らん」No.70（2015年夏）

　「らん」（発行・鳴戸奈菜、編集・五十嵐進、西谷裕子、皆川燈）No.70（2015年夏）から。

　著作集に未収録だった永田耕衣の文章「月士論」（「鶏頭陣」1936年1月号掲載）分載はこの3回目で完結。「月士」は後の中島斌雄。

　特集は「詩の原郷へ　永田耕衣／清水昶」。



さみだれのにおい緑色研究は　　　皆川　燈（前書き略）


傘寿には鰻天ぷら茶碗蒸し　　　海上晴安

暗く深くグラスの薔薇はさめてをり　　　片山タケ子

荒々ときて初蛍あにの手に　　　金子　彩

羽根枕切り裂くあそび神々の

梅雨入りまで間のあるカーブミラーの歪み　　　嵯峨根鈴子

僧二人寄り添ひて摘む苦蓬　　　月犬

取り換えのできぬ顔なり昼寝覚　　　鳴戸奈菜

五月来る同性婚はいいものよ　　　三池　泉

神経科えんぴつで描く曼陀羅華　　　もてきまり

それぞれに深淵のある朝寝かな　　　山口ち加

おしろいをつけて宇宙の吾子に逢う　　　阿川道代






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The Power Station - Get It On (Bang A Gong)

 

【十五句抄出】大串章句集『海路』

2015年
ふらんす堂


　『海路』は大串章（1937 - ）の第7句集。

　大串章は大野林火に師事。「百鳥」主宰。



竜天に登り鯨は骨残す

大白鳥千里来て剥製となる

竹伐つて大海原を近くせり

露の世の宴の酒に酔ひにけり

白鳥と古墳と天地分け合へり

潮干狩バケツ揺すりて終りけり

大空を洗ひ夕立去りにけり

霜柱縄文人のやうに踏む

鳥籠の影揺れてをり春障子

桜鯛ひしめく網を引き絞る

惑星は宇宙の過客聖五月

風鈴売百の音色に溺れをり

整然と虹の原理を説く子かな

大夏木蜜蜂の巣を蔵したり

竹を伐り利休の自刃思ひけり



　あとがきには戦後70年ということで、満州で敗戦を迎えた作者の悲惨な状況が語られている。

　大串章の一家の入っていた女児河の日本人社宅は、敗戦と同時に自衛のために周囲に鉄条網を張りめぐらし、要所要所に小銃を抱えた不寝番が立った。しかし数十日後ソ連兵に武装解除され、無防備となった。その日の夕方、社宅は匪賊に襲われ、一家は裏山へ逃げ込んだ。燃え上がる社宅を見ながら隣町まで歩いて逃げ、以後一年間、食うや食わずで日本に引き揚げてきたという。

　《集団自決とは、窮地に陥った開拓団が、最初妻子を殺し、続いて自らの命を絶つことである。私たちは、戦争の恐ろしさ、平和の有り難さを忘れてはならない。》






※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。






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１９４５年、宝田明少年が見た終戦＝旧満州・ハルビンから引き揚げの記憶

 

【十五句抄出】江渡華子句集『笑ふ』

2015年
ふらんす堂


　『笑ふ』は江渡華子（1984 - ）の第2句集。序文：小川軽舟。栞：池田澄子、櫂未知子。

　江渡華子は「鷹」所属。

　装幀の野口ま綾は江渡華子、神野紗希とともに「スピカ」を運営している野口る理の実妹。

　句集刊行が毎日新聞で取り上げられた。



さまよへばぬるきとこある夏の川

素麺の汁の飛び交ふ親子かな

布団干す真下自転車並びたる

京水菜ぎつしり濡れてゐたりけり

夏の雨夫の目覚ましで起きる

初夏やしづかな河原まで家出

夫抱けば我が家の匂ひ夾竹桃

二人分の団扇を用意して二度寝

シャガールや桃はナイフを拒まざる

垂直に手を挙げにごり酒頼む

のどもとや汗はひかりに愛さるる

臨月や冬の虹すら美味しさう

「ほら、雪」と呼んでもしづかなる胎児

子に名前つけてよ春を呼ぶやうに

紫陽花や笑つてほしいから笑ふ






※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。






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Mendelssohn: 4. Sinfonie (»Italienische«) ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Paavo Järvi

 

「堊」2015年8月号

　「堊」（発行：高石直幸）2015年8月号から。



灌頂のあとの空海花あふち　　　高石直幸


明け易きもののひとつに常備薬　　　大隈チサ子

抱卵の鳩ふくみ啼く聖五月　　　浜崎芳子

 

 

 

 

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Sonny Rollins - St. Thomas

 

「鷹」2015年8月号

　「鷹」（発行：小川軽舟）2015年8月号から。

　小川軽舟の講演録「藤田湘子が遺したもの」後篇、黒澤あき緒・髙柳克弘対談「五人会賞、兆戦の時」掲載。

　黒澤あき緒「俳句時評　読みを鍛える」は、機関誌「インサイトゥー」にまとめられた現代俳句協会青年部シンポジウム「読まれたかった俳句」について。



草合せ古き草の名喨々と　　　小川軽舟

一階に管理人住む蚊遣かな


妄想は老の逸楽飛花落花　　　星野石雀

病人に蝉声聳え立ちにけり　　　奥坂まや


栗咲くや世に定かなる質屋の灯　　　髙柳克弘

見ゆる音聴こゆる光葦青し　　　南十二国

大和煮に缶の味あるキャンプかな　　　上村慶次



　《昭和五十五年から五十九年にかけて鷹編集長を務めた大庭紫逢さんが亡くなった。享年六十七は早過ぎる死と言わざるを得ない》《「美意識の貴公子」だった》（「編集室」小川軽舟）






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2010 Yellow Magic Orchestra 「Behind The Mask

 

「陸」2015年8月号

　「陸」（発行：中村和弘）2015年8月号から。


ベトナムの泥を浴びたる大蜥蜴　　　中村和弘

雲の峰飛行機雲の刺さりおり


蛇衣を脱ぐ城跡のしづけさに　　　淺沼眞規子

スマホ画面を黒く休ませ花筵　　　加藤明虫

悶絶の黒点となる揚雲雀　　　石川真木子

一気に夏パエリヤの塩やや強し　　　村山安子


木蓮の夜の兵士のほろほろと　　　佐々木貴子






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skmt trio The Last Emperor