【十五句抄出】荒井みづえ句集『絵皿』

2015年
書肆麒麟


　『絵皿』は荒井みづえ（1943 - ）の第1句集。300部限定。

　著者は2001年より糸大八に師事。「円錐」同人。



はうれん草の深紅の根元母の恋

天高し帝釈天の竹箒

雑踏に隠るる母の春夕べ

満開の櫻の下の空家かな

雲の峰広くて暗い子供部屋

縄とびの輪の中にある冬銀河

撞球台の四隅の穴や冬かもめ

天窓を見上げる猫や巴里祭

狡猾に生きてさみしき蛇の衣

出し汁を作り置きしてレース編む

鰻屋の階段狭き秋の暮

普段着で行く花冷えの美術館

鳥歩く音して春のトタン屋根

板の間に糸くづ拾ふ良夜かな

火の音も十一月もすみにけり






※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。






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Steve Reich, Music for Eighteen Musicians - Synergy Vocals - Ensemble intercontemporain