2015年
書肆侃侃房
松尾あつゆき(1904 - 1983)の『原爆句抄』が復刊された。
松尾は「層雲」所属の自由律俳人で、句集の序文は荻原井泉水が書いている。
八月九日被爆、二児爆死、四才、一才、翌朝発見す
こときれし子をそばに、木も家もなく明けてくる
すべなし地に置けば子にむらがる蠅
かぜ、子らに火をつけてたばこ一本
子の母も死す、三十六才
くりかえし米の配給のことをこれが遺言か
長女入院、ケロイドの植皮手術
どこにいても親一人子一人の、病室月のさす
この世に生存していた事実、石一つ置く
ここら爆心地か原爆の跡から育った木の下汗ふく
細腕で生きぬきし母腕のケロイドを隠さず
ケロイドからは汗も出ないもの炎天はたらく
天主堂再建
復興の証しキリストふたたび十字架にかかる
原爆で地におちた天使は石として萩さく
酔うて歌うて花の下子が命果てしあたり
被爆者はかなし炎天の下大臣の代読をきく
どこまでいっても亡き子にあわない道をゆく
歳月、悲しみも苦しみもケロイドも萎びている
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美輪明宏が語る原爆体験
コメント
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