2014年
青磁社
『磐梯』は会津若松在住の歌人、本田一弘(1969 - )の第3歌集。
入院先で伯父のもとへ駆けつけた時に東日本大震災発生。約二時間後に伯父が亡くなり、葬儀と避難生活と寺山修司短歌賞受賞が重なったらしい。
爆裂を女男の神らの交合とおもひけらずやいにしへ人は
ひやくねんの闇蔵(しま)ひつつ若夏のみどり綾なす会津盆地は
阿武隈の川霧のなか身締めたるとろうりあまきあんぽ柿食む
うち続く余震の最中死に近き伯父のベッドを押さへつつゐき
避難所のおほいなる闇 百三十の寝息のひくくひくくみちたる
ふるさとの家(うぢ)さかへれぬかなしみはをみなのちさき膕(ひかがみ)にある
おほははのをみなの頃のぬばたまの黒髪 雪のかをり流るる
線量の高い双葉に帰れない子が学校に二十人ゐる
三月の記憶抱く雲浮かべつつ何にも言はぬふくしまの空
官軍に原子力発電所にふるさとを追はれ続けるふくしま人(びと)は
杉やにのごと赤ぐろき夕ぐれよ行方不明のひとりみつかる
復興は進んでゐると謂ふ人のうすきくちびる見つむるわれら
線量は毎時六・五マイクロシーベルト 防護服着て墓洗ふ人
「甲状腺検査」だといふ五時間目「古典」の授業に五人公欠
忘れえぬこゑみちてゐて夏のそら死者は生者を許さざりけり
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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GABRIEL FAURE Requiem PAAVO JARVI Orchestre de Paris,Chen Reiss,Matthias Coerne
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