2014年
角川学芸出版
『濤無限(なみむげん)』は「未来図」主宰・鍵和田秞子(1932 - )の第9句集。
2007年(平成19年)から2013年(平成25年)までの462句を収録。この間に著者は傘寿を過ぎている。
《東日本大震災は、予想外の深い傷跡を心の中に残した。三年過ぎた現在も澱のように心の底によどむものがある。それは、震災に関する報道や写真を見聞すると、即座に太平洋戦争末期の敵機襲来による一望の焼土や瓦礫の光景が蘇ることにもあろう。悲惨な光景は常に重層的になって心に重く積もるのである。》(あとがき)
冬麗やひびのタイルも生涯も
梅一輪木造家屋痩せにけり
生みつぐはかなしも永久の冬泉
待春の鯉はくすぐり合うてゐる
和らふそく造る炎昼まなこ澄み
滝しぶき浴びて敗者のごと戻る
鑑真の夢の円柱冬日差す
大極殿空のまろさを冬の雁
みほとけは禱りに痩せて冬日影
夢に舞ふ幾千の蝶津波跡
秋の滝不意に日射せば祈りたく
名月や透ける水母に一穢なし
霧の富士魔除け人形わらひけり
源氏絵巻恨みは春の霜ほどに
落花激し心によどみをる災禍
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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「沖縄 久高島のイザイホー-第1部-」東京シネマ新社1979年制作
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