「円座」(発行、武藤紀子/編集、中田剛・小川もも子)2013年6月から。
橘の実のつめたさは鳥のため 武藤紀子
瀧音の谺のなかや蕗の薹
ぶらんこのはじめ並びて漕ぎにけり 中田 剛
部屋割りの図をもらひけり花の昼 牛嶋尚子
書に溺れ古書店出ればなごり雪 大西誠一
青木亮人の連載「刻まれた句、漂う夢」第5回では、新興俳句と同時期の、しかしそれらとは異なる埋もれた俳誌から、暮らしの中の戦争を詠んだ句が拾われている。
戦線の映写を見て
雪に這へる兵士の気息にわれも触る 素歩(「樹海」)
支那事変聖戦博覧会所見
軽爆機翼休めたり春光に 照岳(「早春」)
凱旋の兵あり木ノ芽晴るゝ街 武包(「青嵐」)
さらに新興俳句の俳誌「広場」昭和13年6月号から渡辺白泉「支那事変群作」の一部を引いて注目すべき号だったとしつつ、《しかし、俳句史や新興俳句云々とは別のところで個人的に胸を打たれたのは、同じ「広場」の次の連作であった》と、飯島新松子なる俳人の、(事情不明ながら)子との別れを描いた連作が引かれている。
ひとりとなる 飯島新松子
春光に睫のながき児が笑ふ
春風に重たく腕にねぶりたり
車窓に振る手と別れ来てあをきうみ
しんかんと絵本が残り春の昏
春ゆふべ麦めしを噛むひとりとなる
たしかに大局ではなく個人の喜怒哀楽に基づきながら、表現は清新。
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Eric Dolphy and Charles Mingus - Live in Oslo 1964 - frammento
橘の実のつめたさは鳥のため 武藤紀子
瀧音の谺のなかや蕗の薹
ぶらんこのはじめ並びて漕ぎにけり 中田 剛
部屋割りの図をもらひけり花の昼 牛嶋尚子
書に溺れ古書店出ればなごり雪 大西誠一
青木亮人の連載「刻まれた句、漂う夢」第5回では、新興俳句と同時期の、しかしそれらとは異なる埋もれた俳誌から、暮らしの中の戦争を詠んだ句が拾われている。
戦線の映写を見て
雪に這へる兵士の気息にわれも触る 素歩(「樹海」)
支那事変聖戦博覧会所見
軽爆機翼休めたり春光に 照岳(「早春」)
凱旋の兵あり木ノ芽晴るゝ街 武包(「青嵐」)
さらに新興俳句の俳誌「広場」昭和13年6月号から渡辺白泉「支那事変群作」の一部を引いて注目すべき号だったとしつつ、《しかし、俳句史や新興俳句云々とは別のところで個人的に胸を打たれたのは、同じ「広場」の次の連作であった》と、飯島新松子なる俳人の、(事情不明ながら)子との別れを描いた連作が引かれている。
ひとりとなる 飯島新松子
春光に睫のながき児が笑ふ
春風に重たく腕にねぶりたり
車窓に振る手と別れ来てあをきうみ
しんかんと絵本が残り春の昏
春ゆふべ麦めしを噛むひとりとなる
たしかに大局ではなく個人の喜怒哀楽に基づきながら、表現は清新。
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Eric Dolphy and Charles Mingus - Live in Oslo 1964 - frammento
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