閑中俳句日記（別館） －関悦史－

「麻」2012年7月号

「麻」2012年7月号から。

鳥除けの大窓梅雨の森暗し　　　嶋田麻紀


陶枕の山河に桜吹雪かな　　　長山順子

鱒鮨の桃色購うて新幹線　　　飯田綾子


腕を組みルーブル宮へ鉄幹忌　　　小玉孝子

「都市」2012年8月号

「都市」2012年8月号から。


真鍮の手すり握れば青葉騒　　　中西夕紀

ブルースは息に聴き入り緑の夜


夏近し朝は稜線より来たる　　　栗山　心

大空に三日月は舟春の宵　　　丸山　桃

すつぽんの泳ぐ真昼やひつじ草　　　杉本奈津子

「里」2012年3月号

「里」2012年3月号から。
　現時点での最新号。大幅な遅刊を取り戻すため、すごい速度で刊行中。あと6ヶ月分で追いつく。

　発行人・島田牙城の「峠の文化としての春夏秋冬、あるいは、「ずれ」といふ誤解について」を掲載。

　最近、日本気象協会が「二十四節気」を生活実感に合わせて見直すと言い出した（当面強行はされないことになったらしい）。
　その後に起こった一連のリアクションを受けての一文で、暦と実感の「ずれ」は（「二十四節気」を成立させた）中国と日本との地理的差異によるものという通念的な見方を排している。暦について考える上で必読。週刊俳句に全文転載されているのでそちらを参照してください。



干大根この細道は神社まで　　　九里順子

水温むペットショップの瞳たち　　　月野ぽぽな

夏草や魚眼レンズに母眠る　　　小林苑を

なんらかの理解始まる春の雨　　　上田信治

スピーカー上の新書や素麺喰ふ　　　佐藤文香

ルービックキューブが途中桜餅　　　宮沢春花

誰よりも凍つ床の間のキンチョール　　　仲　寒蝉

箱庭に路地裏のあり歩いてみる　　　河西志帆

そこここに子供の頭　蓮ひらく　　　男波弘志

「街」2012年8月号

「街」2012年8月号から。


夏館農地改革以前以後　　　今井　聖

紫陽花や地学部員は掘つてばかり


　以下「先鋒三十」（今井聖撰）から。


蜂の巣を除きし跡の粘りかな　　　伊草節江

一皿のひじき紫陽花のお返しに　　　前田惠美子

蛇の残像裏口を開けるたび　　　大竹照子

鏡まで歩くや髪を洗はれて　　　小久保佳代子

花疲ブックカバーに江戸の絵図　　　佐々木啓介

無菌室よりの伝言跣足にて　　　森　光葉

「街」2012年6月号

「街」2012年6月号から。


行く春の砂のざらつくわが頭蓋　　　今井　聖

屏風絵の狐が暗し黄砂くる

洗濯機の終りの揺れや鳥雲に


　以下「先鋒三十」（今井聖撰）から。


腸検査ごときに念書桜餅　　　上田貴美子

朧の木等間隔はさびしかり　　　大嶋邦子