高柳克弘氏からのお誘いで一昨日の日曜日、鷹の新人会吟行というものにゲスト参加してきた。
場所は原宿の明治神宮。
午後1時集合で、参加者は13名。
小川軽舟(主宰)
大西 朋
葛城真史
兼城 賢
加納洋子
高柳克弘
夕雨音瑞華(「越智瑞華」から改名。以上7名「鷹」)
市川未翔
江渡華子
小川楓子
関 悦史
野口る理
山口優夢(以上6名ゲスト)
好天に恵まれて、私は花粉症全開となった。電車が都内に近づくにつれて水洟が止まらなくなってきたのである。ほぼ丸一日ひたすら鼻をかみ続けることになった。
明治神宮の入口付近はよくわからぬコスプレ集団のようなものが屯していて、針金の人形が倒れもせずに勝手にひょこひょこ踊っている、妖術とも実演販売ともつかない変なものも見た。高柳氏としばし感心して眺めていたが結局何だったのかわからず、こういうものは目を引くが句にはなりにくい。
いわゆる吟行への参加というのは、私は今回が初めてである。多分あまり向いていない。
さらに鷹では去年、鑑賞欄を半年間受け持たせてもらっていた。型重視の湘子が鍛えた集団に、先に評文を偉そうに書いていて、それから実作を見せなければならないわけで、こんな敷居の高い吟行デビューもちょっとないのではないか。などという話を参道歩きつつ軽舟氏としていたら、飯島晴子も吟行では取り立てて見所のない普通の句を出していたという。吟行自体は材料の仕入れで、制作は後日の別な作業といった形になっていたらしい。
明治神宮は木の種類がよくわからないまま参道を抜け、一応手水を使い、書初の張り巡らされた塀、白無垢の花嫁が一際目を引く神前結婚の記念撮影を見て賽銭箱の前へ到着。る理ちゃん、楓子さん、ここで警備員に不審がられつつ手帖を広げて長時間うろうろ。
ばらけていた皆、再びまとまって林の中を抜け、池を見る。
鴛鴦が何羽か憩っていたが、オス同士が喧嘩を始めた。羽を広げ、水面に立ち上がって威嚇し、走る回る。かなりしつこく激しい。鴛鴦の印象が変わった。
枯芝のなだらかな斜面に移ったあたりで鷹グループと離れてしまい、数人で座り込んで、優夢君が受賞祝のカラオケ大会で「あの素晴らしい愛をもう一度」を披露した話など聞く。普通にうまく歌ったつもりが、反応は「いやあ、優夢君偉い。わざと下手に歌ったでしょう」。
る理ちゃんは来る道々、カマキリの卵を潰そうとしたり、薄氷に枝を抛って乗せて喜んだり、松の根方から無闇に広がってアールヌーボーじみてきた宿り木(?)を「かっこいい」と言ったり、その辺の枯芝をかき集めて山にし、焚火をしたがったりと色々した。焚火は無論とめた。
竹下通りも吟行する予定だったが全員はぐれずに通行するのが不可能な人込み。表参道を通って、貸会議室に先に入ってしまい、さっきから腹を空かせてクレープ屋に行くと決めていた優夢君等と数人まとまって改めて竹下通りをうろうろしたが探すと店が意外とない。そのうち優夢君が急に走り出して姿を消したかと思うと、ずいぶん先に見えてきたクレープ屋から脇道へと伸び込んだ行列の最後尾にあっという間に並んでいて、食い物を探す際の水際立った手際と行動力に皆あきれた。
句会は軽舟氏の淡々たる短いコメントが句の弱いところ、不足なところを的確について、厖大な選句を日々こなしている底力が感じられた。
皆の投句は清記用紙、選句用紙とも終了と同時に捨てられたようなのでほとんど覚えていないが、全体に、現物を見てきていながら、あるいはそれゆえに却って通念に終始する句が多かった印象。季語での飛躍も生みにくい。
日が暮れて、「八丈島料理」の店で飲み会。
明日葉の天ぷらというのが出た。大西さんが畑で作っていたことがあったそうだが、恐ろしいほどに繁茂し、カラフルなつるつるの芋虫が大発生したりしてやめてしまったという(帰ってから検索してみたらキアゲハの幼虫というものらしい)。
ここでも突如句会が始まった。
お題「明日葉(季語)」「優」「夢」の3句出しで5句選である。
5センチくらいある巨大アサリの酒蒸しがあったので、「夢に出る大浅蜊かな師の如く」というのを出したら数点入ったが、採ってくれた軽舟氏曰く、「大きな貝というのはうまく使うと面白いけど、大浅蜊か大蛤か、残すときは冷静に考えないと。今日のこの大浅蜊を見ていないと、せいぜい味噌汁に入っているちょっと大き目の浅蜊くらいに取られてしまうかもしれない」。吟行句であれ即吟であれ、基準を緩くするということがなく、句集収録句に対するのと同じ目で評価されているのだ。
飲み食いの間だけは収まっていた花粉症の鼻水が、妙なことに句を作り始めたらまたとめどなく出てきた。「俳句アレルギー」ということにされた。何なのだろうか。
音楽の話も出たが、高柳氏の趣味がちょっと意外で、好きな作曲家として出てきた名前がバルトークとペンデレツキ。シェーンベルクなどはさほどでもないというので、ロシア東欧系の近現代不協和音というのがポイントらしい。
夜10時散会。小雨になっていた。
原宿駅へ戻る歩道橋を、不意に江渡華子嬢が全速力で駆け上がり駆け抜けた。歩道橋の高さですら耐えられない高所恐怖症ということだった。
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