詩誌「ガニメデ」第50号(2010年12月)から。
今回、俳句からは鳴戸奈菜、恩田侑布子、増田まさみの3氏が例によって50句で登場。
帰る雁一羽がずっと遅れおり 鳴戸奈菜
父老いて蛍の匂いのステテコその他
扇風機青空へ飛ぶいっせいに
昼顔の這いゆくところ昼の海
きさらぎの三十日に逢う約束
蟻と蟻ぶつかる空の破裂音 増田まさみ
蝉穴は産屋へつづく写真館
夕顔や蒸発というかふぇてらす
印画紙の裏からひらく水中花
黍畑にしずめて永き蓄音機
日輪の重力薔薇の壊れたり 恩田侑布子
終の棲家や六月の雲の谷
とんぼとんぼ石を抱かずに吾を抱け
秋天のほそきくびれや砂時計
落石のみな途中なり秋の富士
歌壇時評と詩壇時評だけで俳壇時評がなかった「ガニメデ」だが、編集後記によると、4月刊行予定の次号から恩田氏が執筆を始めるらしい。
編集後記からの告知がもうひとつ。
編集人・武田肇氏の第4句集が「昭和八十六年の初荷」として出るとのこと。「曾遊の地ウィーンは、もっぱらハプスブルク皇太子ルドルフ記念の森マイヤーリンクをパラレルワールドに、わが分身の息災を祈るSF的一書となった。書名『ダス・ゲハイムニス』。常のごとくケチと努力の非売品。不道徳にも二百部は造り過ぎだったが、付録の投げ込み『アルベルティーナ 永遠の實在』に愛着あり」。
ちなみに武田氏の既刊句集は『星祭』(1993年)、『海軟風』(2008年)、『ベイ・ウインドー』(2009年)の3点で版元はいずれも銅林社。
コメントを投稿
コメントは記事の投稿者が承認してから表示されます。
アカウント情報
(名前は必須です。メールアドレスは公開されません。)
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。