「麟」第34号(2010年10月号)から。
百日紅日暮れはこゑの逃げ易き 保坂敏子「白露」
夏果てのこゑは野鵐(のじこ)か十一か
沢音の昇る一幹蛇の衣 山下知津子
濡れ岩を行く剥落の秋の蛇
押しつぶされさうなり蝦夷の天の川 染谷佳之子
新涼の森で羽化する齢かな
一水を神の座として秋の虹 飯野きよ子
優曇華や祖母の小さく正座して 駒木根淳子
じよんがらや積乱雲の芯に黒 野口明子
評論では「現代韓国女性詩人たち」森田進、「【共同研究・女性俳句】阿部みどり女研究」等の連載が続く。
前者では今回、金汝貞(キム・イョジョン)という1933年生まれの詩人が紹介されている。
彼はなぜ
あれほど深い眼でわたしを見詰めていたのだろう
わたしはなぜ彼のそのような眼差しのために
高い山を一つ胸に抱いてしまったのだろう
と始まる金汝貞の11行ほどの短い詩「昭陽湖」が引かれていて、森田進は「郷愁を誘い出す因子」と「抑制された愛」、それゆえに「内向する激しい心情」を指摘する。
感情と地形とがダイナミックに絡み合った起伏が沈静と澄明のうちに象られていて鮮明。
コメントを投稿
コメントは記事の投稿者が承認してから表示されます。
アカウント情報
(名前は必須です。メールアドレスは公開されません。)
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。