先月、季刊同人誌「らん」(鳴戸奈菜発行、皆川燈編集)が50号を迎え、同人20名全員が各50句、会員11名が各20句を一度に発表。ボリュームのある特集号となった。評論記事等は一切なし。
「らん」は1998年2月創刊。
97年2月に永田耕衣の「琴座」が終刊、8月耕衣他界。それを受けての創刊だった。
現在の参加者の句もアレゴリーやアニミズムの要素が出たものが多い。
冬空へフォンタナの月描かれし 阿川道代
フォンタナは20世紀イタリアの画家で《空間概念》シリーズ等、キャンバスを切り裂いた作品で知られる。
この句は細い月をそれに見立てたもの。
銀河鉄道の時刻表を裏返す 五十嵐進
安房(あは)の海の底にただよう藻の面輪 伊東聖子
藍色の畸形の魚もきて踊る
こもりくのこもれびたあへるあなとみあ 丑丸敬史
この道を行く人間の暮の花 海上晴安
酢の甕に泛く玉虫をながく視て 金子 彩
つつと来て蜘蛛が字を読む山家集 九牛なみ
貝柱そこで何をしてをるか 嵯峨根鈴子
川流れ堰はどこかと今日の月 清水春乃
憂きわれを淋しがらすな茄子の艶 高野射手男
どこまでも毛虫は行くぞドンチャカホイ
箱庭にわたくしがいる杖ついて 鳴戸奈菜
春夕焼ドロップ缶は鳴らさないで 西谷裕子
宴最中に無機質音の蝶飛ばし 久富風子
短夜を鞄に詰めて出奔する 藤田守啓
羊羹が行ったり来たりして七年 皆川 燈
恋てふ字二匹泳ぐやポリバケツ もてきまり
闇の梨音楽ならばいはば管 矢田 鏃
闇の桃音楽ならばいはば弦
以下は「会員作品20句」から。
梅干の中に神社のやうなもの 楠見恵子
箱はなぜ箱さえ生まぬ花茨 谷 ゆり
春光や美男の二匹絡まりて 結城 万
冷房の部屋に戻りし遺骨かな 渡辺小春
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