須藤徹編集・発行の「ぶるうまりん」14号(2010年4月発行)から。
特集は「俳文の研究」。
オーボエは鬱金色なる薬喰 須藤徹
寓意の冬塵取一つ世界に浮き
骨の中ボルトは錆びぬ大旦
潜水艇の中椿が釘を抱いていた
春日が四股を踏んでるえんたしす
自選作品50句は野田遊三(「夜行」編集人)と野谷真治。
杭を打ついずこも春の暗さかな 野田遊三
後頭を赤子のさわる春の暮
こまどりの乳の匂いの都かな
老鶯の喉より落ちし女人かな
浮上するたびにまっ赤や秋の暮
陽光を配ってあるく奇天烈画人 野谷真治
編集者たち胃袋のがんがらがん
てんてんてまり天のてざわり
夕焼けをむしゃむしゃ喰うバカボン一家
雨上がり少女と散歩する金魚
死角なき病院四角い時間が余る 吹野仁子
一オクターブ高みに隠れ立松和平
外に出るは春雪を汚すため
二股の大根に腰 スポットライト 平佐和子
炬燵でみかん人救出の犬がいて
ハイブリッドカーすべるルート66の枯野
別れきて潮目の高く流れくる 山田千里
万華鏡でありたい冬の蝶
木枯のト音記号がソファーにすわる
雪をゆく太陽はなく祀りなく 土江香子
ホンドテンの足痕白封筒に入る
美少女をぐるりとめぐる右翼相
心臓を落葉がかすめ蹠へ 二上貴夫
またアイボリーを好んでしまふ冬木の
小雨降る都会にバッハ流れけり 村木まゆみ
人の顔に見える家あり秋の風
小京都と称えセイタカアワダチソウ 及川木栄子
狩猟人の「う」青森の「どさ」初明り
《狩猟人の「う」》というのは、吉本隆明『言語にとって美とは何か』に出てくる、原始狩猟民がはじめて海を見たときに「う」なら「う」という音を発したはずという、言語発生の局面を例示した有名な件りからだ(私はこの本、ここで気力が萎えてしまって長いこと読めずにいた)。
青森の「どさ」は津軽弁で「どこへ行くのですか」の意味らしい。
古代人と東北人が海も間近な北の果で呼び交わすヴァーチャルな時空の初明りである。
外房のマリア観音冬ごもり 齋藤泉
無数の扉一斉に開く夜の梅
特集は「俳文の研究」。
オーボエは鬱金色なる薬喰 須藤徹
寓意の冬塵取一つ世界に浮き
骨の中ボルトは錆びぬ大旦
潜水艇の中椿が釘を抱いていた
春日が四股を踏んでるえんたしす
自選作品50句は野田遊三(「夜行」編集人)と野谷真治。
杭を打ついずこも春の暗さかな 野田遊三
後頭を赤子のさわる春の暮
こまどりの乳の匂いの都かな
老鶯の喉より落ちし女人かな
浮上するたびにまっ赤や秋の暮
陽光を配ってあるく奇天烈画人 野谷真治
編集者たち胃袋のがんがらがん
てんてんてまり天のてざわり
夕焼けをむしゃむしゃ喰うバカボン一家
雨上がり少女と散歩する金魚
死角なき病院四角い時間が余る 吹野仁子
一オクターブ高みに隠れ立松和平
外に出るは春雪を汚すため
二股の大根に腰 スポットライト 平佐和子
炬燵でみかん人救出の犬がいて
ハイブリッドカーすべるルート66の枯野
別れきて潮目の高く流れくる 山田千里
万華鏡でありたい冬の蝶
木枯のト音記号がソファーにすわる
雪をゆく太陽はなく祀りなく 土江香子
ホンドテンの足痕白封筒に入る
美少女をぐるりとめぐる右翼相
心臓を落葉がかすめ蹠へ 二上貴夫
またアイボリーを好んでしまふ冬木の
小雨降る都会にバッハ流れけり 村木まゆみ
人の顔に見える家あり秋の風
小京都と称えセイタカアワダチソウ 及川木栄子
狩猟人の「う」青森の「どさ」初明り
《狩猟人の「う」》というのは、吉本隆明『言語にとって美とは何か』に出てくる、原始狩猟民がはじめて海を見たときに「う」なら「う」という音を発したはずという、言語発生の局面を例示した有名な件りからだ(私はこの本、ここで気力が萎えてしまって長いこと読めずにいた)。
青森の「どさ」は津軽弁で「どこへ行くのですか」の意味らしい。
古代人と東北人が海も間近な北の果で呼び交わすヴァーチャルな時空の初明りである。
外房のマリア観音冬ごもり 齋藤泉
無数の扉一斉に開く夜の梅
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