世の滾りおり寄せ鍋の蓋外す 玉石宗夫
短日や傾く家の鉄亜鈴 大城戸晴美
レオタード脱ぎて小さき文化の日 芝野和子
一葉は頑と落ちざり六林男の忌 喜多より子
またひとり女出て来る夏の月 佐藤富美子
流れゆく雲の速さや吊し柿 河村勲
忘年会鯛の目玉と消化剤 長尾房子
立冬や硝子は重ねてはならず 石川日出子
山茶花の八重が疎まし日の丸に 西順子
愚者ゆえに見えだしてくる枯蓮 望月至高
切り分けし聖菓の傾(かし)ぐ反抗期 出口善子
雪になりそうな暗さを逢いに行く 河村勲
夏の夜の対岸をひた走りおり 佐藤富美子
コロッケの油に溺れ年詰まる 玉石宗夫
両性を生きる人あり文化の日 原知子
育児放棄(ネグレクト)考えている雪達磨
躊躇わず一直線に海鼠裂く 岡本匡
寒月や影と二人で滑走す 大門嗣二
みぞれおりうろこの残る排水口 岩男進
岩肌を斜めに濡らす時雨かな 田中晴子
セロハンが指にまつわる冬日かな 田中一夫
人ごみに孤独きわだつ冬帽子 和田京子
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