2022年8月
深夜叢書社
『その前夜』は文芸批評家井口時男(1947 - )の第3句集。
以下、前書注釈等は省略。
椿落ち地中に濡れた眸(め)がひらく
怪獣はみな孤独だつたな夏日星
火の文身水の文身都市雷雨
星と星牽き合ふ夜も海鞘太る
汗男腹に五寸の縫合痕
台風の眼に与太郎が舞ひ踊る
王よ歴史は月下の墓地にすぎませぬ
雪の夜のわが少年を幻肢とす
軒つらゝぬり絵ぬる子に微熱あり
山爺が魔羅振りをどる滝とゞろ
名刺あり「私設月光図書館司書」
ウイルスの春ひつそりとケバブ売
鳩蹴散らかしマスク老人夏の乱
ひきがへる他人ばかりの死者の数
金雀枝やいのち傷みて母逝きぬ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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