『透きとほるわたし』は魚住陽子(1951 - 2021)の遺句集。鳥居真里子編。跋文:正木ゆう子。
著者は小説家。
蔦落葉輪郭だけの聖家族
牡丹園ひとまわりして母が消え
桃を詠む男の歌をみな憎み
王羲之の書に鬼蓮の浮く時刻
裏山にまだ兄がいて百合匂う
間違って植えしカンナが父の恋
冥界の戸の透き通るまで月鈴子
露の世に小説という処方箋
鰤起し佐渡一枚をはためかす
白き藤揺らしていたる末期の眼
野晒しの電池のごとき秋思かな
散ってみたいと手袋の五指思う
春であるざわめきは神のオルガン
折皺が駿河を分ける春の地図
遠雷の轟轟(とどろとどろ)と死の準備
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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