『うつろふ』は奥坂まや(1950 - )の第4句集。
著者は「鷹」同人。
やや老いて写真館出づ罌粟の花
秋のこゑ硝子籠めなる石斧より
秋風や死して兎の長々と
燃えてゐる家の記憶や真葛原
池の面に冰りはじめの皺現れし
やどかりの脚あふれ出て動きけり
日盛や森は地球のしづかな夢
サバンナ夕焼大祖(おほおや)が鬨挙ぐるごと
皆どこに行ったのか白昼のカンナ
月さしてビルも私もいづれ砂
滅びよと黒き手袋落ちてくる
浜捨ての鮫かがやける寒暮かな
椿落ちしづかに飢ゑてゐたりけり
ひろびろと波打つ布のやうに春
桜咲く鏡のなかの方が広い
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
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