11月は都内と往復する用が多かったせいか、後半どっと疲れて、読めた冊数も30冊を割り込んでしまい、25冊。
片山壹晴『名言を訪ねて―言葉の扉を開く』は版元から寄贈いただいたもの。記して感謝します。
レナード・コーエン『歎きの壁』集英社・1970年
《17世紀、カナダ原住民イロクォイ族は圧殺された。聖処女キャサリンは苦痛の修行に堪えながら、凄惨な殉教を遂げる。20世紀、同性愛の相手〈F〉の導きのもと、一人の老民族学者が彼女の死の意味を追い求める。人種、政治、言語の厚い壁、孤独な魂、性の荒野、彼の年若い妻イーディスに、Fは官能の悦びをもたらした! 2人の女を結ぶ歴史の足枷を打ち砕き、惑乱の性を貪る狂気の疾走に、混沌の中の生の回復をパセティックに問いかける衝撃作。
歴史の呪縛を撃ち、壁の向うを走れ!》
フィリップ・K・ディック『宇宙の眼』ハヤカワ・SF・シリーズ・1967年
《アメリカ、ベルモント市にある今世紀最大のビヴァトロン原子炉の故障は、まったく突然におこった。プロトン光波変流装置が不意に効力を失って、60億ヴォルトの恐るべき光波が炉の天井めがけて放射されたのだ。天井と、ドーナツ型の磁石装置と、そしてその上に張り出していた観測台とは瞬時にして消滅した。観測台にいた八人の見物人は、ビヴァトロン・チェンバーの中へ、まっさかさまに墜落した……。
そして、そのときを境に、この宇宙を律する自然の法則が、一変してしまったのだ!
☆
見よ! 巨大な地球は宇宙の中心にびくとも動かず、そのまわりを、ちっぼけな太陽を含めたすべての星が、地球につきそう従者のように、定められた軌道を動いてゆくのだ! そしてその上に――宇宙の果に――途方もなく大きな瞬かぬ眼が見ひらかれて、すべてを看視しているではないか。
現代S・Fの最前線をゆく新進作家フイリップ・K・デイック、1957年の新作。S・F史上これほど異常な幻想に満ち、しかもリアルな作品は類をみないだろう。》
長野まゆみ『いい部屋あります。』角川文庫・2017年
《大学進学のために上京した鳥貝一弥17歳。東京での部屋さがしに行き詰まっていたところ、いい部屋があると薦められて訪ねた先は高級住宅街の奥に佇む洋館だった。条件つけだが家賃も破格の男子寮だという。そこで共同生活を営んでいるのは揃ってひとクセある男ばかり。先輩たちに翻弄され戸惑いつつも、鳥貝は幼い頃の優しい記憶の断片を呼び覚まし、自らの出生の秘密と向き合っていく。艶っぽくて甘酸っぱい、極上の青春小説!》
マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』講談社選書メチエ・2017年
《千葉雅也氏、推薦!!
今、世界中で注目される哲学者マルクス・ガブリエル。その名を一躍有名にしたベストセラー、待望の邦訳!
20世紀後半に一世を風靡した「ポストモダン」と呼ばれる潮流以降、思想界には多くの人の注目を浴びるような動きは長らく不在だったと言わざるをえません。
そんな中、21世紀の哲学として俄然注目されているのが、新たな実在論の潮流です。中でもカンタン・メイヤスーは「思弁的実在論」を主張し、思想界をリードする存在になっています。それは「人間が不在であっても実在する世界」という問いを投げかけ、多くの議論を巻き起こしましたが、その背景にはグローバル化が進んで国家や個人の意味が失われつつある一方で、人工知能の劇的な発展を受けて「人間」の意味そのものが問われつつある状況があるでしょう。
こうした新たな問いを多くの人に知らしめたのが、本書にほかなりません。「新しい実在論」を説く著者ガブリエルは1980年生まれ。2009年に史上最年少でボン大学教授に就任したことも話題になりましたが、2013年に発表された本書がベストセラーになったことで、一躍、世界的スターになりました。
本書のタイトルにもなっている「なぜ世界は存在しないのか」という挑発的な問いを前にしたとき、何を思うでしょうか。世界が存在するのは当たり前? でも、そのとき言われる「世界」とは何を指しているのでしょう? 「構築主義」を標的に据えて展開される本書は、日常的な出来事、テレビ番組や映画の話など、豊富な具体例をまじえながら、一般の人に向けて書かれたものです。先行きが不安な現在だからこそ、少し足を止めて「世界」について考えてみることには、とても大きな意味があることでしょう。
「です、ます」調の親しみやすい日本語になった今注目の書を、ぜひ手にしてみてください!》
古井由吉『ゆらぐ玉の緒』新潮社・2017年
《老齢に至って病いに捕まり、明日がわからぬその日暮らしとなった。雪折れた花に背を照らされた記憶。時鳥の声に亡き母の夜伽ぎが去来し、空襲の夜の邂逅がよみがえる。つながれてはほどかれ、ほどかれてはつながれ、往還する時間のあわいに浮かぶ生の輝き、ひびき渡る永劫。一生を照らす生涯の今を描く全8篇。古井文学の集大成。》
収録作品=後の花/道に鳴きつと/人違い/時の刻み/年寄りの行方/ゆらぐ玉の緒/孤帆一片/その日暮らし
アーディーケント・T・ジェフリイ『世界のミステリー・ゾーン』角川文庫・1977年
《砂漠の真ん中で難破船を見た男の話をあなたは信じられるだろうか? 砂丘の間から巨大な船首が突き出ていたというのだ。アメリカ南西部の砂漠地帯には、このような“難破船”が何隻も埋っているという。いったいこれはどういうわけなのだろう?
世界にはおよそ常識では信じられない体験をした人々がたくさんいる。科学の発展によっても決して解明しえない謎と神秘に、世界は満ちているのだ。
有名な“死の海”サルガッソーに閉じこめられ生還した少年の話、メールストロムの大渦巻の中から奇跡的に脱出した漁夫の話など、世界各地に伝わる数々の奇談と怪現象を収録した好読物。》
木村敏・金井美恵子『私は本当に私なのか―自己論講義』朝日出版社・1983年
秋山さと子・尾辻克彦『異次元が漏れる―偶然論講義』朝日出版社・1983年
埴谷雄高・小川国夫『闇のなかの夢想―映画学講義』朝日出版社・1982年
エーリッヒ・フォン・デニケン『宇宙人の謎―人類を創った神々』角川文庫・1974年
《1965年、南米大陸の地下深く、巨大なトンネル網が発見された。その洞窟から発掘された石像と石や黄金板に刻まれた絵画・文字等に注目したデニケンは、鋭い着想と豊富な論証によって、宇宙人の謎に迫ってゆく。大宇宙を舞台とする宇宙戦争とか、地球に飛来した敗者の宇宙人が、どのような理由で、またどのようにして、類人猿から知的人類を創造していったかなど、壮大な構想をつぎつぎに展開する。前作を凌ぐ興味つきない快作。》
唐十郎『戯曲 唐版 滝の白糸』角川文庫・1975年
《ゴーストタウンの袋小路に佇む青年アリダに、十年前の誘拐犯・銀メガネが近づき、大枚十万円をまきあげる。
心中を図って死んだ兄と、生き残った片割れの義姉お甲。女はいま、ドサ回りの小人プロレスラー一座の仲間。銀メガネに金の返済を迫りながら、お甲は得意の水芸を披露する。構えた扇子から、まさに鮮血の滝の飛沫が噴きあがり…。〈冥府との密通者〉唐十郎が凄絶なる美と戦慄にみちた地獄巡りへ道案内する表題作。他に、三幕物「由比正雪」、一幕物「ガラスの少尉」を収録。》
収録作品=唐版 滝の白糸/由比小雪/ガラスの少尉
河野典生『緑の時代』角川文庫・1975年
《雪みたい! 緑の雪が降ったみたい――ぼくたちが入りこんでしまった緑の世界。そこでは新宿の交叉点も駅の屋根も、そして交番の中の巡査の眼鏡も、すべてが濃緑の蘇苔類によって覆いつくされようとしていた。そして、ぼくたちが猿のような声をあげようと、店の果物を黙って食べようと、人々は誰も気がつかないのだ。
いったいこの世界は、どこまで広がったのか……?
鬼才、河野典生が描く幻想世界〓他に「子供の情景」「ピノキオ」〓〓〓編を集めた珠玉作品集。》
※〓部分は古本のテープ剥がし痕のため判読不能
収録作品=子供の情景/パストラル/グリーン・ピース/淡彩画/見知らぬ町/アイアイ/赤い服のジャンヌ/緑の時代/ピノキオ/蟻/月球儀くん/完全な女/ジャリ・タレント/宮益坂上歩道橋/美しい芸術/性的な時代/微妙な味/穏やかな日々/機関車、草原に
片山壹晴『名言を訪ねて―言葉の扉を開く』コールサック社・2018年
《片山壹晴氏の「名言」の旅に同行していると、その「名言」の作者の生死を賭けて語った経験が、言葉に宿っていて、その人生の最も大切な智恵を、手渡しされるような瞬間を感じさせてくれる。(鈴木比佐雄「解説」より)》
中丸明『絵画で読む聖書』新潮文庫・2000年
《旧約聖書はいつ、誰が書いたのか?イエスの本当の生年は? イエスの磔に使われた釘は何本? 世界の終末は来るのか?聖書をめぐるあらゆる謎・疑問が、宗教画を読み解くことで明らかに。旧約聖書の創世記から、新約聖書におけるイエスの誕生と死、ヨハネの黙示録にいたるまで、名古屋弁風の「カナン弁」による会話を織り交ぜながら、平易に解説。世界の美術館めぐりにも役立つ。》
久我有加『恋の押し出し』ディアプラス文庫・2013年
《合コンの席で同じ男の泉田に一目惚れした達弘。 その日のうちに告白するものの瞬殺で玉砕。 けれど簡単には諦められず、彼の通う他学部の校舎まで訪ねていったところ、なんと泉田のまわし姿を目撃する。 彼は相撲部に所属していた。 もちろんその程度で気持ちが冷めるわけもなく、変な奴だと呆れられながらも相撲部に通ううち、徐々に仲良くなるけれど……!? 標準語チャラ男攻×関西弁ツンデレ受のキャンパスラブ♡》
水島忍『魔法使いとラブレッスン』もえぎ文庫ピュアリー・2007年
《高校生の桐山大稀はある日の帰宅途中、ネットで噂されていた異形の怪物が人間を襲っている場面に遭遇。怪物はその牙を大稀に向け、絶体絶命のピンチに追い込まれる。しかし、そこへ謎の美青年・辰巳一哉が現れ「助けてほしいなら、専属ナイトの契約をしろ」と大稀に迫ってきて……!? 銀髪の美形魔法使いとフツーの高校生の、恋と魔法のレッスン開幕★》
三浦雅士『孤独の発明―または言語の政治学』講談社・2018年
《なぜ人間だけが言葉で話すようになったのか? 言語はコミュニケーションの手段ではなく、世界を俯瞰する眼としての自己を産み出した。人間のあらゆる認識、思考、行為の根幹をなす言語という現象の本質に迫るスリリングな論考。言語は内面に向かい、孤独は人を結びつける。》
西村京太郎『超特急「つばめ号」殺人事件』カッパ・ノベルス・1983年
《「特急『つばめ』で、恐ろしいことが……!」不可解な匿名の手紙が警視庁に……。国鉄が計画した、戦前の「燕号」と同じ編成・時刻表で走る特別列車「つばめ号」での事件を予告? 十津川警部がつきとめた手紙の主・小井手春雄は何者かに絞殺! 小井手は昭和15年の「超特急『燕』開業十周年記念」列車に招待されていた。さらに、もう一人の招待客も惨殺! 43年前の「燕号」の車内で、何かあったのか!? 当時の招待客とその関係者を乗せ、東京を発った「つばめ号」が名古屋を通過したとき……!? 43年前のある事件に挑戦する十津川警部の推理! 鉄道ファンあこがれの「つばめ号」を舞台に、連続殺人の謎とサスペンスあふれる書下ろしトラベル・ミステリー第11弾!》
《私が生まれた昭和五年に、超特急「燕号」が、初めて東京―神戸間を走っている。
それまでの特急が、平均時速五一・六キロだったのに比べて、「燕」は、六七・五キロだったから、いかに画期的なものだったかわかる。この超特急「燕」が、のちの新幹線に発展していくのである。
私は、いつかこの「燕」のことを、書きたいと思っていた。何年か考え、戦前の「燕」へのノスタルジイをこめて書いたのが、この作品である。 「著者のことば」》
小島信夫『月光』講談社・1984年
《画期的大作『別れる理由』以後の新たな展開を示す著者最新の連作短篇集》
収録作品=月光/青衣/蜻蛉/合掌/高砂/再生
中川右介『現代の名演奏家50―クラシック音楽の天才・奇才・異才』幻冬舎新書・2017年
《非凡な才能を持つ音楽家同士の交流は深く激しい。帝王カラヤンに見初められ女王の道を駆け上がった天才少女ムター(Vn)、グリモー(Pf)とアルゲリッチ(Pf)という美貌と野性味溢れる新旧異才の共鳴、反体制を貫きソ連国内で演奏できなかったロストロポーヴィチ(Vc)を復活させた小沢征爾…。彼らは何をきっかけに師弟やライバル、恋人となったか。時に対立し、それは音楽にどう影響したか。自らの才能だけを頼りに栄光を掴みながらも戦争や冷戦に翻弄される天才たちの50の邂逅の物語が、現代クラシック界の1枚の相関図として浮かび上がる。》
ヴァレリー・アファナシエフ『ピアニストは語る』講談社現代新書・2016年
《クラシック音楽の「鬼才」として熱狂的なファンを持つヴァレリー・アファナシエフ。本書は、昨年、二〇一五年の来日の折に、東京目白の松尾芭蕉ゆかりの日本庭園、蕉雨園で収録された、世界的ピアニストが初めてこれまでの人生と芸術を振り返った貴重な証言の書籍化です。
ソ連時代の暗鬱な空気の中でのモスクワ音楽院での修業の日々。国際音楽コンクールのプレッシャーと優勝の喜び。国を捨てる決意を固めるまで。そして亡命決定の瞬間のスリル。さらにはベートーベン、フルトヴェングラーを始めとする愛する音楽について。
さまざまな苦難の時を乗り越え、今や「鬼才」から「最後の巨匠」へと変貌を遂げた至高の芸術家が、自らの内面に分け入り、人生の軌跡と芸術哲学を縦横無尽に語ります。》
金沢有倖『逆らってみたい!』ガッシュ文庫・2010年
《眉目秀麗な優等生・翠には、大ッキライな先輩がいる。その名は長谷川篁。人望厚く優しい生徒会長なのは表の顔で、翠に対しては腹黒ドS。望んでもいないのに「男同士のエッチの仕方、教えてあげるよ」と校内で迫ってくる。挙句の果てには翠とのHを写真に撮って脅迫。「だって翠が好きなんだよ?」なんて最低な先輩。大ッキライなはずなのに、名前を呼ばれるだけでこんなに身体が熱くなるってどういうこと?》
月本ナシオ/原作:ビジュアルワークス『なむあみだ仏っ!―春夏秋冬 四季むすび』ビーズログ文庫アリス・2016年
《古の時代より、人々の心を惑わし、破滅に導く悪しき煩悩の数々……。近年、膨張し続ける煩悩から人々を救うため地上に降り立ったのは、十三仏と呼ばれる仏達だった!! しかし彼らは勤めの傍らで、地上の生活も思い切り楽しみ始め――!? 祭りあり! コスプレあり!? の春夏秋冬!》
山下洋輔・相倉久人『ジャズの証言』新潮新書・2017年
《ジャズクラブにジャズ喫茶、時にはバリケードや紅テントの囲いの中で、誰もが前のめりで聴き入った時代の熱気、病に倒れながらも「自分の音」を探し求めた青春、海外フェスに演奏ツアーでの飽くなき挑戦、ジャズの成り立ちと音楽表現――演奏家と批評家として、終生無二の友として、日本のジャズ界を牽引してきた二人による、白熱の未公開トーク・セッション!!》
栗城偲『全寮制男子校に転入してみた。』プラチナ文庫・2014年
《全寮制男子校に転入した青葉は、思わぬハプニングで絶大な人気を誇る生徒会長・尊に抱き上げられ、嫉みを一身に受けることに。降りかかる嫌がらせを強気で撃退していく青葉だったが、ある日、先輩に部屋へ連れ込まれ、襲われかける。怯えた青葉は、咄嗟に生徒会役員たちが住む特別寮に逃げ込んだ。ところがそこで尊の秘密の素顔を知ってしまい、口止めのため準役員に指名されて!?》
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