脇田成『賃上げはなぜ必要か』は、何で企業が内部留保ばかり溜め込もうとするのかが素人でも一応わかる。その破壊的な事態を是正したくない富裕層が多いのだろうし、今後、政治・経済が正気の方向へ戻る気はしない。
原民喜「夏の花」はむかし教科書に載っていたのを一瞥して以来の再読だが、澄明で、予想外に面白かった。空襲の延焼を防ぐためにと、兵隊たちが来て無傷の家をいきなり微塵にしてしまい、住人が泣く場面など、全然覚えていなかったが、こちらの歳がいってから震災後に読むとむごさが身に迫る。
星、筒井、眉村等の日本SFは大体再読。半村、小松作品は初読。愛読してきた作家でも取りこぼしがいろいろある。長いこと『三頭の淋しい虎』なる題名だけが知られていたカブレラ・インファンテ作品が『TTT』として訳出された。生きているうちに翻訳されたのはまことにありがたい(装幀が相変わらずだが)。
鈴木博之『庭師 小川治兵衛とその時代』東京大学出版会・2013年(日本建築学会著作賞)
《工業用水として計画された琵琶湖疏水を変じて、近代和風文化の粋を示す自然主義の庭園に用い、パトロンたちが自己を演出し、人びとと会い、決断を下し、孤独に沈潜するための「場」を創造しつづけた七代目小川治兵衛―その活動の軌跡から、日本における近代が生み出した精神を読み取る。》(「BOOK」データベースより)
日本建築学会著作賞講評全文(PDF)
鈴木博之の「庭師 小川治兵衞とその時代」を読んだ!|とんとん・にっき
高山宏・中沢新一『インヴェンション』明治大学出版会・2014年
《縦横無尽!天衣無縫!言語道断!3.11から世界の構造までをめぐって知の狩猟民ふたりが織りなす、これぞ「会話術」! 》(「BOOK」データベースより)
ヘンリー・ミラー『ヘンリー・ミラー・コレクション11 母』水声社・2013年
《ミラーの30代以降、40年間の、揺れて流れた作家生活の中から生み出された不動の中・短篇小説を収録。》(「BOOK」データベースより)
和合亮一『詩の邂逅』朝日新聞出版・2011年
《3月11日、午後2時46分―。大震災、津波、原発事故絶望の淵に立った…。福島で生まれ育った詩人が、様変わりした故郷への葛藤を抱えながら、福島に住み続ける人々の“声”を聞き、失われた日常を取り戻す。ツイッターで話題となった『詩の礫』から一歩踏み出し、新たな“希望”を見いだすために書き下ろされた言葉たち。》(「BOOK」データベースより)
星新一『夜のかくれんぼ』新潮文庫・1985年
《宇宙からきた意味ありげな電波、壁からはえた人間の手、神からテレポートの能力をさずけられた男 etc。
信じられないほど、異常な出来事が、次から次へと起るこの世の中。科学もふきとび、理屈も引っこむ摩訶不思議な世界に、あなたもまきこまれるかもしれません。ひと足さきに、活字の世界で奇妙な体験をしてみませんか。ミステリアスな世界にあなたを誘うショートショート28編。》
収録作品=こんな時代が/黒い服の男/ある帰郷/有名/若葉の季節/支出と収入/自信/未来人の家/不吉な地点/いやな笑い/うすのろ葬礼/はじめての例/黄色い葉/一家心中/つきまとう男たち/出現と普及/ご用件は/夢のような星/幸運の未来/殺意/背中の音/勝負/手/金の粉/幸運の公式/違和感/悪の組織/追われる男
小松左京『空から墜ちてきた歴史』新潮文庫・1984年
《地球は宇宙人に観測されていた!? ある晩春の深夜、著者が庭先で拾った奇妙な金属棒。そこから脳に直接伝わってきた「コトバ」は、奇想天外、驚天動地の、宇宙人による地球観測調査報告だった――該博な知識、最新の学説・科学情報、推理を駆使して、地球生成から人類誕生、そして現代まで、45億年の地球史、人類史を宇宙的視野から一気にとらえなおす新コマツ式SF長篇小説。》
筒井康隆『メタモルフォセス群島』新潮文庫・1981年
《足のはえてくる果実。木の枝に寄生している小動物。人間を食べて首に似た果実をつける植物。放射能の影響であらゆる生物が突然変異体と化した不気味な世界を描いた『メタモルフォセス群島』。妻子を脱獄因に人質にとられたサラリーマンが、脱獄囚の家にのり込んで脅迫のエスカレーションを企てる『毟りあい』。ほかに『五郎八航空』『定年食』など幻想と恐怖の突然変異的作品群。》
収録作品=毟りあい/五郎八航空/走る取的/喪失の日/定年食/平行世界/母親さがし/老境のターザン/こちら一の谷/特別室/メタモルフォセス群島
アリス・マンロー『小説のように』新潮社・2010年
《子持ちの若い女に夫を奪われた音楽教師。やがて新しい伴侶と恵まれた暮らしを送るようになった彼女の前に、忘れたはずの過去を窺わせる小説が現われる。ひとりの少女が、遠い日の自分を見つめていた―「小説のように」。死の床にある青年をめぐる、妻、継母、マッサージ師の三人の女たちのせめぎあいと、青年のさいごの思いを描く「女たち」。ロシア史上初の女性数学者として、19世紀ヨーロッパを生き抜いた実在の人物をモデルに、苦難のなかでも潰えることのなかったその才能とたおやかな人物像を綴る「あまりに幸せ」など、長篇を凌ぐ読後感をもたらす珠玉の10篇。国際ブッカー賞受賞後第一作。「短篇の女王」70代の集大成。最新作品集。》(「BOOK」データベースより)
星新一『マイ国家』新潮文庫・1976年
《マイホームを“マイ国家”として独立宣言した男がいた。訪れた銀行外勤係は、不法侵入・スパイ容疑で、たちまち逮捕。犯罪か? 狂気か?――世間の常識や通念を、新鮮奇抜な発想でくつがえし、一見平和な文明社会にひそむ恐怖と幻想を、冴えた皮肉とユーモアでとらえたショート・ショート31編。卓抜なアイディアとプロットを縦横に織りなして、夢の飛翔へと誘う魔法のカーペット。》
収録作品=特賞の男/うるさい相手/儀式/死にたがる男/いいわけ幸兵衛/語らい/調整/夜の嵐/刑事と称する男/安全な味/ちがい/応接室/特殊な症状/ねむりウサギ/趣味/子分たち/秘法の産物/商品/女と金と美/国家機密/友情の杯/逃げる男/雪の女/首輪/宿命/思わぬ効果/ひそかなたのしみ/ガラスの花/新鮮さの薬/服を着たゾウ/マイ国家
星新一『午後の恐竜』新潮文庫・1977年
《現代社会に突然出現した巨大な恐竜の群れ。蜃気楼か? 集団幻覚か? それとも立体テレビの放映でも始まったのか?――地球の運命をシニカルに描く表題作。ティーチング・マシンになった教育ママ、体中に極彩色の模様ができた前衛芸術家、核爆弾になった大臣――偏執と狂気の世界をユーモラスに描く『狂的体質』。ほかに、『戦う人』『契約時代』『理想的販売法』『幸運のベル』など全11編。》
収録作品=エデン改造計画/契約時代/午後の恐竜/おれの一座/幸運のベル/華やかな三つの願い/戦う人/理想的販売法/視線の訪れ/偏見/狂的体質
吉村昭『冷い夏、熱い夏』新潮文庫・1990年(毎日芸術賞)
《何の自覚症状もなく発見された胸部の白い影――強い絆で結ばれた働き盛りの弟を突然襲った癌にたじろぐ「私」。それが最悪のものであり、手術後一年以上の延命例が皆無なことを知らされた「私」は、どんなことがあっても弟に隠し通すことを決意する。激痛にもだえ人間としての矜持を失っていく弟……。ゆるぎない眼でその死を見つめ、深い鎮魂に至る感動の長編小説。毎日芸術賞受賞。》
荒俣宏『悪趣味の復権のために バッドテイスト』集英社文庫・1998年
《テイストとは何ぞや。良い趣味と悪趣味の違いとは何か? アラマタは説く、悪趣味とは美とモラルとハーモニーの対極にあるものだと、これこそが魂の健康を取り戻す服用薬になりうると。本書に展開されるのは、現代を読み解くバッドテイストの実際。怪奇でグロなカラー図版満載で贈る悪趣味の世界へようこそ。》
谷恒生『フンボルト海流』角川文庫・1985年(角川小説賞)
《税率の安い国に船籍を移した便宜置籍船ファイブスター号は、鉱石積出港、ペルーのサンミゲロに錨を降ろした。
さまざまな国籍をもつ食いつめ船員が乗りこんでいるこの船に、楯野龍彦は一等航海士として乗船。
だが、砂塵舞う街には、経済を牛耳るユダヤ系組織と旧ナチスの不気味な影がうごめいていたのだ。
人間の愛憎を翻弄するように荒れ狂うフンボルト海流。男の友情をテーマに描いた冒険サスペンスの傑作長編。
昭和56年度角川小説賞受賞作。》
西村京太郎『名探偵なんか怖くない』講談社文庫・1977年
《かの三億円強奪事件をそっくり再現させて、それを世界的名探偵に推理させようという酔狂な企画。立案者は財産をもて余す成金。招かれた探偵は、メグレ、ポワロ、クイーン、明智の豪華版。お膳立てが整い、監視されているとも知らぬ犯人は行動を起したが、意外や意外。巧みな構想に支えられたパロディの秀作。》
柳田国男/柄谷行人編『「小さきもの」の思想』文春学藝ライブラリー・2014年
《柳田国男は詩人、官僚、ジャーナリスト、民俗学者と移動と試行錯誤を続けながら、生涯にわたって、資本と国家を乗り越える「来たるべき社会」を追究していた。その「可能性の中心」がくっきりと浮かび上がる、まったく新しいアンソロジー。》(「BOOK」データベースより)
フェリックス・ガタリ『人はなぜ記号に従属するのか』青土社・2014年
《情報や記号があふれる世界のなかで、私たちはその制度によって自らの欲望も捻じ曲げられ、そのことに気が付かぬままに「世界」に取り込まれている。いかにして、ここから抜け出すことができるのか。そして、どうすれば現実を革新できるのか。『千のプラトー』と同時期にあらわされたガタリの重要著作。待望の邦訳。》(「BOOK」データベースより)
中沢新一『惑星の風景』青土社・2014年
《多才な知性・表現者とともに、人類の心の古層を探り、自然との通底路をつくりだす。生まれ出ようとしている次の文明と科学の構造を予見する。》(「BOOK」データベースより)
山田正紀『イリュミナシオン―君よ、非情の河を下れ』早川書房・2009年
《アルチュール・ランボーを追え! ランボーの詩に隠された、時空を凌駕する秘密を、使徒パウロが、エミリー・ブロンテが、ヴェルレーヌが読み解く。
内戦に揺れる東アフリカの国家サマリスの国連領事・伊綾剛に与えられたのは「『反復者』を追って、『非情の河』を下れ」という任務だった。人類の理解を超越した侵略者との戦いを、ランボーの詩に乗せて奏でる華麗なる幻想ハードSF。》
筒井康隆『エンガッツィオ司令塔』文春文庫・2003年
《恋人に指輪を買うために新薬人体実験の掛け持ちをした「おれ」。幻聴、妄想、電波、異常性欲と副作用はエスカレート。ついには大食、変態の化物となって恋人の家に乗り込んだ。さあ修羅場の始まりだ——。表題作をはじめ、エログロ、スカトロから抱腹絶倒のパロディまで全十篇。断筆解除後初の超過激傑作短篇集。解説・小谷野敦》
収録作品=エンガッツィオ司令塔/乖離/猫が来るものか/魔境山水/夢/越天楽/東天紅/ご存知七福神/俄・納涼御摂勧進帳/首長ティンブクの尊厳/断筆解禁宣言
岡﨑乾二郎『ルネサンス 経験の条件』文春学藝ライブラリー・2014年
《フィレンツェのサンタ・マリア大聖堂を創造したブルネレスキ、ブランカッチ礼拝堂壁画を描いたマサッチオ…。芸術の可能性を追究する造形作家が、ルネサンスの天才たちの作品の精緻な分析を通じて、芸術の秘密を明らかにする。永遠に新しい驚異の書物。》(「BOOK」データベースより)
原民喜『夏の花・鎮魂歌』講談社文庫・1973年
《人類がはじめて直面した悲惨な被爆地獄を、冷静かつ正確に、しかも死者への深い祈りをこめて描いた「夏の花」三部作。愛惜をこめて亡妻を偲ぶ連作「美しき死の岸に」。ほかに、妻や被爆者をいたむ「鎮魂歌」、絶筆「心願の国」など、現世の終末を、その繊細鋭敏な感性で予感し、自殺した原民喜の代表的作品を収録。》
収録作品=夏の花(壊滅の序曲・夏の花・廃墟から)/鎮魂歌/美しき死の岸に(苦しく美しき夏・秋日記・冬日記・美しき死の岸に・死の中の風景・心願の国)
野坂昭如『エロトピア① 』文春文庫・1977年
《男にとっての、あるいは女にとっての性を解明すべく、女学生のセーラー服願望とマスターベーション礼讃を二本の柱に、古今東西の性知識と著者自身の体験を投入してつづった話題のエッセイ集①。
「ポーノトピアという言葉はあっても、エロトピアはなく、ぼくの新造語である」(著者あとがきより)
イラストレーション・山藤章二》
眉村卓『発想力獲得食』双葉文庫・2014年
《人間とは、何かを食べて命をつなぐ生物である。人間以外にも、もしかしたら食物に執着する生物がいるかもしれない。不眠解消を条件に味覚を求めてきた無体生物、味覚異常の社員、粕汁を食べるのが止められない男、突然現れてお菓子を食べまくる生き物。いつか貴方の身の回りにも、似たようなことが起きるかもしれない!?食にまつわる奇妙で秀逸なショートショート集。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=食ってくれ/ヌブレニー/有望な青年/食後の感想/特異体質/若い日の味/なぜか粕汁/親子/胃の痛み/まずくなれ/健康時食品/深夜の料理/念ずれば味/ドタ/遍歴/習慣の結果/戦闘意欲/謎/山口先生のうどん/星氏システムの実験/おまかせ定食/挑戦の会/アイスクリーム騒動/貝柱もどき/暑い日/発想力獲得食/ドクター・ストップ/同行者/騙し合い/G大学で
南直哉・玄侑宗久『同時代禅僧対談―〈問い〉の問答』佼成出版社・2008年
《「問う」という行為を通して見えてくる仏教とは何か―同時代を共有する二人が大胆に提示するスリリングな対談。 》(「BOOK」データベースより)
玄侑宗久/<問い>の問答
足達大進編『禅林句集』岩波文庫・2009年
《禅門内外の典籍から広く集めた禅語のアンソロジーともいうべき禅林句集は、室町期から次々と編まれ、心の指針を与えてくれる金句集として、禅僧には禅語に習熟するための手引きとして読まれてきた。今回、約三四〇〇の秀句を選び、字数順、五十音順に収めた。》(「BOOK」データベースより)
ギジェルモ・カブレラ・インファンテ『TTT トラのトリオのトラウマトロジー』現代企画室・2014年
《エル・ベダードと呼ばれる3ブロック程の「夜も眠らぬ」歓楽街、そこには、外国人観光客、知識人、ポン引き、娼婦などが蝟集する。多くの極貧労働者によって購われた特権階級の遊び場にオマージュを捧げることで、作家は何を言おうとしたのだろうか?1958年、革命前夜のハバナを舞台にしたキューバの鬼才、カブレラ・インファンテの、翻訳不可能な怪作、遂に「超訳」成る!》(「BOOK」データベースより)
竹村牧男『禅と唯識―悟りの構造』大法輪閣・2006年
《中国で育まれた体験の仏教・禅と、インド大乗の壮大・精緻な論理を伝える唯識。好対照をなす両者を「真の自己への道」としての共通性から捉えて、その根底にある仏教の修行と悟りの根本構造に迫る。》(「MARC」データベースより)
岬兄悟『愛は爆発―ショート・ショート傑作集』双葉社・1990年
《奇抜なアイディア、新鮮な感覚、切れ味抜群、あなたを異次元世界の魅力へと誘う。世の中にこんな面白い世界があったのか。岬兄悟のショート・ショート集決定版。選りすぐった24編の作品を収録。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=残像人間だ/不眠儀式/怪段/他人の靴/過剰演技/人生ルーレット/傾斜/天井裏の足音/扁平男/夢監督/アレルギー野郎/父親ゆずり/メルヘン・セーター/男は合鍵/リレー・セールスマン/人物図書館/愛は爆発/女子大生絶頂パワー/果てしなき逆行/ジャングルジム/パンク青年の供述/マッド・コレクター/ぬいぐるみの秘密/よき隣人
阿刀田高『ミッドナイト物語』文春文庫・1987年
《あなたは気付いたことは、ありませんか? 気味の悪い偶然の重なり、形をとらない悪意の棘、得体のしれない不安感……。あなたを怯えさせるそうした“何か”は、いつも突然、それも深夜に訪れる! 恐怖小説の名手が時間をミッドナイトにかぎり、軽妙に描いた九つの怖いお話をあつめたのがこの本です。 解説・金田浩一呂》
半村良『虚空王の秘宝(上)』徳間文庫・1999年
《ある日、露木一郎はゆえなく国家権力に追われる身となった。彼は逃亡を手助けしてくれた「虚空蔵菩薩」を奉じる秘密結社に加入し、その領袖が、失踪中の父・露木春夫であることを知る。探鉱師であった父は、いまや、秩父山中に埋まっていた巨大な宇宙船に搭乗すべき400人のクルーたちの頂点に立つキャプテンであった。その動きを察した権力との戦闘のさなか、露木たちを乗せた船は地球を出発する。》
半村良『虚空王の秘宝(下)』徳間文庫・1999年
《宇宙船は、長さ10キロ。幅5.5キロ。厚さは3キロ。 400人を乗せた船は、独自の意志で飛び、搭乗員を教化する。露木一郎たちクルーは、船を「ママ」と呼ぶのだ。ママは、太陽系からワープし、さまざまな惑星に接近し、そこに進化した生命と構築された文明を観察させる。クルーたちは、蟻の知性体、蜥蜴星、植物の巨大な知性体と出合い、衝撃を受ける。ママは地球人たちに、何を伝えたいのか?》
パオロ・バチガルピ『ねじまき少女(上)』ハヤカワ文庫・2011年(ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞)
《石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。遺伝子組替動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物ンガウを手にする。ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。彼とねじまき少女エミコとの出会いは、世界の運命を大きく変えていった。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞など主要SF賞を総なめにした鮮烈作。》(「BOOK」データベースより)
パオロ・バチガルピ『ねじまき少女(下)』ハヤカワ文庫・2011年(ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞)
《聖なる都市バンコクは、環境省の白シャツ隊隊長ジェイディーの失脚後、一触即発の状態にあった。カロリー企業に対する王国最後の砦“種子バンク”を管理する環境省と、カロリー企業との協調路線をとる通産省の利害は激しく対立していた。そして、新人類の都へと旅立つことを夢見るエミコが、その想いのあまり取った行動により、首都は未曾有の危機に陥っていった。新たな世界観を提示し、絶賛を浴びた新鋭によるエコSF。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などSF界の賞を総なめにした作品。》(「BOOK」データベースより)
ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『千のプラトー(上)―資本主義と分裂症』河出文庫・2010年
《ドゥルーズとガタリによる最大の挑戦にして未だ読み解かれることない比類なき名著。リゾーム、アレンジメント、抽象機械、リトルネロ、戦争機械など新たな概念を創造しつつ、大地と宇宙をつらぬいて生を解き放つ多様体の思考。器官なき身体/存立平面から“機械圏”へ―来たるべき民衆のための巨大な震源。》(「BOOK」データベースより)
ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『千のプラトー(中)―資本主義と分裂症』河出文庫・2010年
《ドゥルーズ/ガタリによる極限的な思考の実験。中巻では顔貌性、そして逃走線の考察から生成変化をめぐりつつ、宇宙の時を刻むリトルネロへ向かい、絶対的な脱領土化の果ての来たるべき生、来たるべき民衆を問う。》
ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『千のプラトー(下)―資本主義と分裂症』河出文庫・2010年
《遊牧民が発明した「戦争機械」は国家の外部にあり、国家をたえず危機に陥れる。「国家装置」はそれを捕獲し、労働を発明し、やがて資本主義の公理系と結び合う。しかし戦争機械とマイノリティの革命的な生成変化がやむことはない。かつてない国家、戦争、技術、資本への問いから、平滑空間/条里空間の考察を経て非有機的生に向かう壮大な歴史哲学。》(「BOOK」データベースより)
ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『哲学とは何か』河出文庫・2012年
《「この時代に逆らって、来たるべき時代のために」書かれたドゥルーズ=ガタリの最後の共著にして、その思想の総決算。内在平面‐概念的人物‐哲学地理によって「哲学」を総括し、カオスに立ち向かう三つの平面として哲学‐科学‐芸術の連関を明らかにする。世界への信をうちたてながら、人間をこえる限りなき生成/創造へと思考を開く絶後の名著。》(「BOOK」データベースより)
チャールズ・ファーガソン『強欲の帝国―ウォール街に乗っ取られたアメリカ』早川書房・2014年
《映画『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』でアカデミー賞(長編ドキュメンタリー映画部門)を受賞した監督が筆鋒鋭く追及する金融危機の「戦犯たち」。果てなき強欲が招いたアメリカの劣化とは? 》(「BOOK」データベースより)
末木文美士『反・仏教学―仏教vs.倫理』ちくま学芸文庫・2013年
《人間は本来的に、公共の秩序に収まらない何かを抱えて生きる存在である。常識として通用してきた倫理道徳では対応できない問題が起きたとき、そこに見えてくるのは何なのか。“人間”の領域、つまり倫理的な世界をはみ出したところで出会う「他者」、さらにはその極限にある「死者」との関わりを、著者は、古典的な仏教学ではない“現代に生きる仏教”の視座から、根源的に問い直そうとする。倫理を超える新たな地平を示すと同時に、日本仏教の思想的成果を丹念に抽出し、それを広範な哲学・思想史の中に位置づけ、鍛え直した著書。初版刊行後の理論的展開を書き下ろしで加えた、待望の文庫版。》(「BOOK」データベースより)
古井由吉『鐘の渡り』新潮社・2014年
《女を亡くしたばかりの朝倉と、春には女と暮らす篠原。十一月、男たちは二人きりの旅に出る。燃えあがる紅葉が狂ったように輝く山をくだり、人家を離れた宿で眠りについた彼らは、雨の過ぎる昏い寝床の内から、谷を渡る鐘の音を聴いた―。現代文学の最高峰を示す連作八篇。》(「BOOK」データベースより)
収録作品=窓の内/地蔵丸/明日の空/方違え/鐘の渡り/水こほる聲/八ツ山/机の四隅
『鐘の渡り』 古井由吉著 評・前田英樹(批評家・立教大教授):読売新聞
机の上――古井由吉『鐘の渡り』大澤信亮:波 -E magazine Nami-
鐘の渡り 古井由吉著 深く静かな内なる苦難の叫び :日本経済新聞
東京新聞:鐘の渡り 古井由吉 著
赤川次郎『三毛猫ホームズの恐怖館』カッパ・ノベルス・1982年
《三毛描ホームズと飼い主の片山兄妹は、アパートのガス爆発事故に出くわした。現場からは女高生の絞殺死体が発見され、しかも彼女は妊娠していた! 一方、片山刑事にラブレターを送った(!)女高生も背中を剌される。どうやら二つの事件は、上志学院高校とつながりがあるらしい。この高校の〈怪奇クラブ〉に、神秘的な美少女竹林あかりが入部した。彼女の本当の狙いは何か? 殺された娘が飼っていた黒描は何を知っているのか?
――高校のクラブ活動を背景に繰り広げられる謎また謎を、ホームズはどう捌く? 待望の書下ろし第6弾!》
《小説の中では平気で何人も殺しているが、その実、私は遊園地の「お化け屋敷」には怖くて入れないはどの臆病者である。しかし、怪奇や恐怖の世界は、ロマンがあってこそ魅力的なのだ。こけおどしの「お化け屋敷」には、かつての怪奇映画のヒーローたち――ドラキュラやフランケンシュタインの居場所はない。
これは、遠いヨーロッパの古城や森の奥へ、少年時代の夢を誘ってくれた「彼ら」に捧げる、著者と三毛猫ホームズからの敬意をこめた挨拶である。「著者のことば」》
《この春、赤川次郎は、念願のドイツ・オーストリア旅行を果たした。本書に出てくる怪人たちを生んだという古城には足を伸ばせなかったものの、ロマンチック街道を歩き、音楽の洪水にも溺れるとができた。ドイス語のわかる三毛描ホームズが、まごつく片山刑事たちを肋けて事件を解決する日も開近いだろう。》
赤川次郎『顔のない十字架』カッパ・ノベルス・1982年
《宮川佐知子は25歳のOL。両親を飛行機事故で失い、大学をやめて働きながら弟の面倒をみている。その弟の秀一が、恋人とドライブ中に人を轢いてしまった! 死んだ男の所持品は、「K物産課長 真山一郎」の名刺と、「五千万円用意しないと一週間後に娘の命は自動的になくなる」と書かれた宛先のない脅迫状が一通。真山一郎とは何者か? 娘とは誰で、どこに匿われているのか? タイム・リミットは7日間。人質を捜す佐知子の前に、ナイフ使いの殺し屋や闇のシンジケートが入り乱れて…。――ひと味新しいサスペンス・ミステリーの快作!》
《かつて、アラン・ドロンが悪党の兄と善良な弟の二役を演じた映画「黒いチューリップ」が公開されたとき、女性の観客に、どっちが魅力的だったか、アンケートを収ったら、悪党役への支持が圧倒的だったという。悪に徹した男には、女性を強く惹きつける何かがあるようだ。
この作品は、ある誘拐事件に巻きこまれた平凡な一人のOLが、「誰が誘拐されたのか」という謎に挑むサスベンスであり、同時に、炎に誘われる蛾のように、悪党に惹かれていく女性心理のドラマでもある。
「著者のことば」》
《「フト気がついてみたら、車の免許を持っていなかった」赤川次郎、一念発起して教習所に通いはじめた。が、殺到する原稿依頼で、すぐ半年間の期限が切れてしまう。どの編集者に訴えても、「ウチのは別として、少し執筆量を減らしては?」という回答ばかり。こうなったら、蒸発して短期集中教習所に入るうかと、本気で考えている。》
夏樹静子『ドーム―終末への序曲(上)』カドカワノベルズ・1986年
《水爆実験地で幼時被曝し、東大研究生として来日した若いアメリカ女性ジュディ。白血病に冒されていた彼女の切実な願いは、地球文明の滅びの芽といえる全面核戦争が起きても、人類を生き残らせることだった。彼女と設計技師・古田司郎との愛が、核時代のノアの方舟「ドーム」を発想させた。この巨大なドームが完成すれば、地球が“核の冬”に覆われて死滅した後も、千名の生命を生き永らえることができる――。ジュディの死を看取った古田の憑かれたような活動で、二人だけの夢物語「ドーム」の建設は、多くの人々の共感を得、着実に実現へと向かっていった……。》
夏樹静子『ドーム―終末への序曲(下)』カドカワノベルズ・1986年
《人類生存の夢「ドーム」を創ろうという世論が大きく沸きあがっていった。財団法人DA(ザ・ドーム・アソシエーション)が設立され、吉田は発案者として事務総長に抜擢された。八千億以上の巨費の募全活動が始まり、NY、LAなど世界各地にも支部が創られ、組織は拡大した。そして、建設地は南半球のアプラ王国にある南溟の島に困難な交渉の来、決定した。世紀の大建設が開始されたが、執拗な妨害や王国の政変による陰謀に計画は挫折するかにみえた……。
核時代の人類生存をテーマに、愛と祈りのメッセージをこめたライフ・ワークともいうべき書下し近来末大長編小説!》
《私は、この作品を、作家としてと同時に、女性として、母として、
一人の人間としての立場から、愛と祈りをこめて書きました。
これは、地球という、かけがえのない美しい星に生きる人々へ棒げるメッセージです。私の本当の願いが、核戦争のない平和な世界であることは、申すまでもありません。『ドーム』は私にとって、記念碑的なライフワークになるでしょう。》
コリーン・テイラー・セン『カレーの歴史』原書房・2013年
《「グローバル」という形容詞がふさわしいカレー。インド、イギリスはもちろん、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカ、アジアそして日本など、世界中のカレーの歴史について多くのカラー図版とともに楽しく読み解く。レシピ付。料理とワインについての良書を選定するアンドレ・シモン賞特別賞を受賞した人気シリーズ。》(「BOOK」データベースより)
布川秀男『もう取り戻せない昭和の風景 [東京編]』東洋経済新報社・2004年
《昭和30~60年代。そんなに昔ではないのにむしょうに懐かしく思える街並み、建物、川、人々…。もう帰ってこない日常が印画紙の上によみがえる。写真155点の貴重な記録。》(「BOOK」データベースより)
川田忠明『名作の戦争論』新日本出版社・2008年
《モーツァルト、ベートーヴェン、ワーグナー、西東三鬼、イサム・ノグチ、イヴ・サン=ローラン、マドンナ。作品の時代性を探り、戦争・平和の視点で捉えなおすと、思わぬ意図や構造が見えてくる―。》(「BOOK」データベースより)
脇田成『賃上げはなぜ必要か―日本経済の誤謬』筑摩選書・2014年
《日本経済が力強さを取り戻せない。その原因は、過剰な企業貯蓄にある。90年代以降、企業は国内投資と人件費を抑制し、内部留保を増大させた。その結果、経済全体の資金循環が大幅に狂った。経済を正常に戻すには、賃上げを行い、資金循環の再始動が必要だ―。本書では、市場メカニズムを分析し、(苦しまぎれの金融政策ではなく)労働市場を通じて経済を動かす方法を考える。正統的なマクロ経済学者による、大胆で現実的な日本経済論。》(「BOOK」データベースより)
タイモン・スクリーチ『定信お見通し―寛政視覚改革の治世学』青土社・2003年
《5つもの庭園、あくなき随筆魔、海岸線の採集、建築模型マニア、集古編纂。ただのカタブツにあらず。気鋭のジャパノロジストが視覚文化論から提示する、まったく新しい寛政の改革、新しい松平定信像。》(「BOOK」データベースより)
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映画『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』予告編
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